ニュース

新橋演舞場「初春歌舞伎公演」の賑わい

 1月3日(木)、新橋演舞場「初春歌舞伎公演」が開幕、昼夜ともに新年のお客様でおおいに賑わいました。

 新橋演舞場の正月は『鳥居前』から。狐忠信は7年ぶりとなる獅童です。都から落ち延びようとする義経一行に同行がかなわない静御前。梅の木にくくりつけられた静を、狐忠信が早見藤太から救います。『義経千本桜』でここだけは荒事の扮装で現れ、弁慶よりも荒々しく立廻り、正義漢ぶりを発揮する狐忠信。妖術を使った立廻りをお見逃しなく。義経に大役を任され、ようようと引き上げる狐六方の引込みに、場内が大きく沸きました。

 

 満場の客席から現れた長兵衛に、大きな歓声が上がった『極付幡随長兵衛』。海老蔵が3度目の幡随院長兵衛を勤めます。長兵衛内の場では、堀越勸玄の長松が子分を相手に、長兵衛顔負けの俠気を見せつけました。やがて、水野の屋敷での酒宴に招かれ、死を覚悟する長兵衛。身支度ひとつとっても、ぐっと前を見据え、俠客らしさに隙のない長兵衛が、長松の頼みに流すひと筋の涙。湯殿での立廻りは、左團次の水野を相手に、息をつかせぬ緊張と気迫のこもったひと場となりました。

 

 『三升曲輪傘売』は海老蔵の五右衛門が、寿の字蝙蝠と傘をあしらった衣裳で、傘売りに姿をやつして登場します。傘売りの綱吉は今評判の人気者で、五右衛門を捕まえようと躍起の男伊達は、傘の手妻を見せろと難癖をつけます。綱吉は身体のどこに隠していたのか、面白いように次から次と傘を出してきます。男伊達はしびれを切らし、若い者も加わっての立廻りとなりますが、綱吉はものともせずに涼しい顔。五右衛門らしい大きさを見せつけて昼の部が幕を降ろしました。

 夜の部は、歌舞伎十八番の内『鳴神』で幕を開けます。約6年ぶりの鳴神上人を勤める右團次と、雲の絶間姫に初役で挑む児太郎、新鮮な顔合わせとなりました。罠かもしれぬと警戒していたにもかかわらず、天人とも竜女ともたとえられるほど、見目麗しい絶間姫に惑わされ、堕落してしまう鳴神上人。それだけに絶間姫の色香や使命感の強さ、鳴神上人の純粋さが際立ち、最後のぶっ返りからの憤怒のさまが迫力を増します。豪快な六方の引込みが大きな拍手を呼びました。

 

 『牡丹花十一代(なとりぐさはなのじゅういちだい)』は海老蔵の祖父、十一世團十郎の生誕110年を祝うひと幕です。鳶の者や芸者で賑わうところに、次々と顔がうちそろい、ほろ酔い機嫌の鳶頭もやって来ます。待ってましたの声に海老蔵の鳶頭が粋な返しをしたところへ、愛らしい手古舞姿の堀越麗禾ときりっとした若頭の勸玄が登場しました。習い覚えた踊りをきっちり舞い納め、二人の「ご見物の皆様方、新年あけましておめでとうございます」の挨拶に、場内は万雷の拍手。最後は親子が祭礼の山車の上にきまって記念の年を寿ぎました。

 

 続く『俊寛』では、海老蔵が初役で俊寛僧都に挑みました。鬼界ヶ島の岩陰から現れた俊寛は憔悴しきった様子で、島でのやるせない日々を嘆きます。仲間の祝言にひとときの喜びを感じていたところに赦免船を見つけ、一縷の望みに元気を取り戻したかに見えましたが、そこからは運命に翻弄されるかのように状況は二転三転。ついには浮世の船には望みなしと、赦免船をにらみつけました。最後は自分でゆく道を決めた俊寛が、崖の上に一人座し、やがてその眼から光が消えるように幕が降りました。

 

 島に一人残された悲愴な俊寛僧都から、目に艶やかな城の女小姓へ。がらりと姿を変えてご見物を楽しませるのも、歌舞伎の趣向の一つです。初芝居の切狂言は、新年の大奥が舞台となる新歌舞伎十八番の内『春興鏡獅子』、一礼して踊り始める海老蔵の弥生。舞扇がまるで手の一部になったかのように美しい軌跡を描き、獅子頭はまったく別の生き物が憑りついたかのように弥生を振り回します。後ジテでは毛並みを崩すことなく毛振りを見せ、獅子の座につくにふさわしい姿を見せました。

 新橋演舞場「初春歌舞伎公演」は1月27日(日)までの公演です。

2019/01/04