歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



「江戸名所百人美女 芝神明前」国立国会図書館蔵(禁無断転載)

 江戸時代の化粧とは、未婚・既婚やその女性の身分などが一目でわかってしまうものでした。その代表的な例がお歯黒です。当時の女性は、結婚が決まると歯を黒く染め貞節をあらわした、とされています。また、江戸中期以降には、子供を授かると眉を剃ることが定着したようです。髪型も、貴賎を問わず下げ髪だった平安時代とは変わり、さまざまな形の結髪が誕生しました。

 そんな江戸時代のファッションリーダーといえば、もちろん歌舞伎俳優です。彼らは、芝居を通じて常に町方庶民の流行を先導してきました。髪型や化粧の方法をとってみても、同様のようで、化粧品の宣伝文句に人気の歌舞伎俳優が愛用しているという謳い文句を付けたり、俳優の名前が付いた化粧品が販売されたりしていました。また、路考髷(ろこうまげ)や平九郎鬢(へいくろうびん)など歌舞伎俳優の髪型が次々に流行するので、髪結い(かみゆい)は、常に人気俳優の髪型を敏感にキャッチしていなければなりませんでした。

 そして、江戸時代にも現代と同じように流行の髪形や化粧を紹介した本が数多く出されていたようです。「都風俗化粧法」や「容顔美艶考」などは江戸時代の代表的なファッション誌でした。それらには、化粧の基本から季節ごとの化粧法まで詳しく解説されています。「お洒落をしたい。美しくありたい」という思いは、江戸時代も現代も変わることがない女性の願いのようです。

長沼静きもの学院

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