歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



承天禅寺は鎌倉時代、博多織の始祖 満田弥三右衛門と共に宋に渡った聖一国師が開山した禅寺です。以来、博多織縁の寺として今日に至っており、毎年博多織功労者の慰霊祭をはじめ、博多織求評会(新作発表会)などが行われています。
天本さんの浴衣は知人である女優・萬田久子さんからプレゼントされたもの。故・石ノ森章太郎さんが萬田さんをモデルに描いた作品だそうです。
内尾さんが手にされているうちわは4歳のお孫さんからプレゼントされたもの。夜空に浮かぶ大輪の花火が描かれた手作りのうちわは浴衣の装いにぴったりです。
承天禅寺にある博多織の戸帳は、「博多織デベロップメントカレッジ」卒業生の作品。
 
 博多帯は優美な絹鳴りの音、それに独特のしゃきっとした風合いが魅力のひとつです。張りのあるしなやかな博多帯は、背中で一締めしたときにキュッと心地よい音が響き、安心感を与えてくれます。また、帯の表面にある無数の畝(うね)が締めた帯を緩みにくくしてくれるので、きもの初心者の方でも安心です。ここでは、これから本番を迎える夏に向けて、博多帯を主役にした浴衣の装いをご紹介します。

 まずは白地にうすいグレーで縞模様と撫子の花柄をあしらった大人の女性の雰囲気が漂う内尾さんの装い。献上柄があしらわれた白地の博多帯を小振りな文庫結びにすることで、かわいらしさが加わっています。一方、涼やかな表情を浮かべた女性が描かれた浴衣を粋に着こなしていらっしゃる天本さん。やさしい黄色地にピンクやグリーンといったパステルカラーを用いた博多帯でやわらかな印象をプラス。帯結びを貝の口にすることで、すっきりとしたうしろ姿になっています。

 「博多帯」と一口で言っても、その楽しみ方はさまざまです。平地の献上帯は浴衣だけでなく、小紋や紬といった染や織のきものに合わせて一年を通して締めることができます。カジュアルな小紋に平地の帯をキュッと締めれば、ショッピングから観劇まで一日中アクティブに過ごしても安心です。一方、紋織の帯は素材や文様に合わせてカジュアルからフォーマルまで幅広く楽しむことができます。その多彩な色彩と緻密な文様の豊富さから、今では紋織が博多織の生産の7割を占めているそうです。伝統と技術を守りながら日々進化し続ける博多織。そこに女性の心をぐっと掴んで離さない理由があるのかもしれません。
 
 

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