歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



オフホワイトの地にブルー、茶、黄色のダリアが咲き誇る絽の小紋。燦燦と降りそそぐ夏の日差しにも負けない鮮やかな色彩と大胆な絵柄が印象的な一枚です。
縦に絽目が入るたて絽の付け下げ。胸元と裾に描かれたバラの文様はろう彩染によるもの。裾に向かって施されたグレーのグラデーションが立ち姿をすっきりと見せてくれます。
黒地に施された細かい白の文様によって遠目には濃いグレーにも見える絽の江戸小紋。透け感を感じさせる濃い色の夏きものは、軽やかさや涼感をより演出してくれます。
 
 夏の明るい日差しの中、背筋がしゃんと伸びたきもの姿は周囲の人にも「涼」を感じさせ、とても美しいものです。透ける夏きものは大人の女性の憧れでもあります。7月・8月の盛夏と言われる短い期間だけに味うことができる夏きものを良く知り、存分に楽しみましょう。

 夏きものといえば透け感が爽やかな絽、紗、麻や夏紬などがあげられます。中でも絽はきものだけでなく帯、帯揚にも良く使われる夏生地の代表格です。短い期間しか着られない夏きものですが、絽のきものは合わせ方次第で街着からフォーマルまで装うことができ、シチュエーションの幅はぐっと広いのです。今回は「薄物(うすもの)」を存分に楽しめる盛夏の装いについてご紹介します。

 カジュアルなお出かけに適した小紋は、夏らしさを感じさせる色や柄で遊び心を演出したいものです。絽の小紋なら、夏きものならではの軽やかさと爽やかな裾裁きを肌で感じることができます。シルバーやガラスの小物やアクセサリーを合わせて涼感を演出するのも楽しいですね。

 結婚式などフォーマルな場所には、略礼装としても使える絽のつけ下げ(※)が役立ちます。夏のお出かけは少しでも涼しく装いたいもの。つけ下げには訪問着のように絵羽模様の柄が多くついていないので、着たときに少しだけ軽さを感じることができます。また、格のある文様をあしらった織の袋帯を合わせることで、よりフォーマル感を出すことも可能です。

 夏きものの装いには、白・生成り・寒色系といったうすい色が好まれがちですが、長襦袢の透け感を感じさせる濃い色のきものもおすすめです。黒地の江戸小紋にあしらわれた文様の中には、麻の葉や末広などおめでたい文様が描かれています。これらを組み合わせることで流水の文様を表現し、「涼」を演出するという職人の熱い心意気と技術が光る一枚は、着る人の心にもシャキッとした気分を与えてくれます。

※つけ下げは、「つけ下げ模様」といって反物のうちにあらかじめ袖、身ごろ、衿になる部分を決め、袖山、肩山を中心に模様がすべて上向きになるように染め分けられた模様づけが施されたきものをいいます。

長沼静きもの学院

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