歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



慶事の席で相手と向かい合って挨拶をする時は、帯にさしてある末広を手に持って行います。

座るとき、立つときは、一連の動作を一気に行おうとせず、一呼吸ずつゆっくりと行うように心がけましょう。
 華やかなきものの装いは、披露宴や食事会、観劇の際など、さまざまな場面で目を引きます。だからこそ、きもの美人を目指すなら、コーディネートだけでなく、所作にも気を配りたいところ。お辞儀の仕方や、着席の仕方といった、基本のマナーを身につけて、いつどんな場面でも、優雅に、自信を持って振る舞えるようにしましょう。


お辞儀には、礼の深さによって「会釈」、「普通礼」、「敬礼」の三種類があります。いずれも胸を張り、左右どちらかの足を気持ち後ろにずらして、かかとを少し開いた状態で行います。こうすることでより美しく、安定した姿勢になります。お辞儀は、相手への敬意や心遣いを伝える所作でもありますので、正しい方法を覚えていろいろな場面で活用してください。

〈会釈〉
「こんにちは」など、挨拶の言葉を口にしながら、軽く上体を倒します。顔と目線は下げず、相手の目を見たままで。末広は、おはしょりの辺りで左の手のひらに先端を載せ、上から右手を軽く添えるようにして持ちます。両手の指は自然に折り、脇を締めると美しく映ります。

〈普通礼〉
目線を下げながら、上体を30度くらい傾けます。同時に、手も少し下げましょう。頭は急に上げずに、ゆっくりと起こすと、丁寧な印象を与え、敬意の気持ちが伝わります。

〈敬礼〉
お詫びの際などに、深々とするお辞儀が敬礼です。目線を下げながら、上体を60度くらい傾けます。この時、首を下げすぎないよう気をつけましょう。手の位置も、お辞儀をしながら少し下げます。


椅子の前に立ち、そのまますっと腰を落とします。帯が背もたれに当たらないように、やや浅く腰掛けましょう。背丈のある人や足の長い人は、少し深めに腰掛け、そろえた足を気持ち横に流します。座っている姿が美しく見えるポイントは、姿勢を正して、足先をそろえること。
大切な想い出をおさめる写真。せっかくならコツを抑えて美しく残しましょう。これから紹介する三つの項目は、「美しく、楽に立つ」ためのポイントにもなっていますので、ぜひ取り入れてみてください。
 
● ポイント1 立ち方 ● ポイント2 手元 ● ポイント3 足元
両足をそろえて立ち、片方の足を親指ひとつ分くらい後ろに引き、かかとを開きます。できれば右の足(上前の端側)を後ろに引いたほうが綺麗です。また、和装はまっすぐ立っていても帯がある分、体が反り返って見えるので、体重を気持ち前にかけるようにしましょう。真正面よりも、カメラに対して45度くらい体を振るとより美しく映ります。
手はへその辺りで、指を自然に曲げて軽く握ります。バッグや末広を持つ時もそうですが、指を伸ばしたり硬く握ったりせずに軽く曲げるのは、手を小さく、美しく見せるための秘訣です。手の位置は、若々しく見られたい時は高めに、落ち着いた印象に見せるには帯の下に持ってきましょう。
一方の足を少し後ろに引き、かかとを少し開くことで、姿勢が安定し、長い時間楽に立っていられます。鼻緒に指を最後まで入れず、余裕を持たせましょう。

長沼静きもの学院

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