歌舞伎いろは

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この日、組紐を初めて体験した髙野愛子さん。台の真ん中の「組み口」から、くみ上がった紐が下へ下へと連なっていく様子を見て「わぁ、こんな風にできていくんだ…」と感動。慣れるまでは少し緊張気味でしたが、大野先生の温かく熱心な指導により、ひとたびリズムを掴んだ後は、ご自身のペースで組紐を楽しんでいらっしゃいました。
「くみひも科」の生徒さんによる作品の数々。左端の携帯ストラップは、学院で行われるイベントに向けて、生徒が知恵を出し合いながら共作したもの。右端のネックストラップと、その横の携帯ストラップは、初心者でも作成可能です。
 組紐は、帯締として締めるだけでなく、「自分で組み上げる」という楽しみ方もあります。長沼静きもの学院の「くみひも科」には、幅広い年齢層の生徒が、アットホームな雰囲気の中、思い思いの組紐作りに取り組んでいるそうです。

 「自分のきものに合った自分だけの帯締を作りたいという方はもちろん、きものを着ない方も多くいらっしゃいます。そうした方は、自分の作ったものを人に身につけていただく、というまた違った喜びがあるんですね。 組紐というと難しく思われるかもしれませんが、手順はすごく簡単で、一定の組み方にしたがって、糸を交叉させていくという単純な工程を繰り返していくだけです。上手下手は後からついてきますし、楽しみながら、ただ一生懸命に取り組んでいけば、その先には『自分だけの組紐』という答えが必ず待っていますよ」

 ひと通りの技術を身につけた後も、柄の位置を自在に調整したり、難易度の高い文様に挑戦したくなるなど、組紐は学ぶほどに、どんどん奥が深くなっていきます。その証拠に、大野先生の生徒さんには10年、20年と通われている方が多くいらっしゃるとか。

 「私にとって生徒さんは、家族のようなもの。教室は組紐の技術を学ぶだけでなく、心の交流の場でもあるんです。私自身もこれまでに数え切れないほどの感動と気付きをもらいました。生徒さん達に育ててもらっているという気持ちでいっぱいです」

 そう話す大野先生も、実は「くみひも科」の卒業生。参加した「くみひも講習会」で教えてらした講師の先生が、家庭的でとても素敵な方で、組紐の魅力とともに、その先生への憧れから、その日のうちに入学を決めたといいます。

 「組紐の楽しさを知ることができたこともそうですが、尊敬できる先生と出会えて本当によかったです。“肩の力を抜いて楽しんで”という信念のもと、技術だけでなく大切なことをたくさん教えてくださいました。先生は、私の組紐生活の軸になっていましたね。先生から学んだ思いを、今度は、私が生徒さんに伝えていけたら…と思っています」

長沼静きもの学院

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