歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



布だからこその美しい結び
花が開いたように見える、びんの飾り結び。風呂敷の真ん中にびんを立て、余った部分をヒダに畳んで、花びらのように開かせるだけ。先様を喜ばせようという贈り主の気持ちが現れます。こんなふうにいただきものをしたら、自然と笑顔をお返ししたくなります。

 

季節を感じさせる、結ぶ小道具
夏の小風呂敷いろいろ。素材は絽縮緬ですが、アジサイ、萩、リンドウなど、夏の冷たい雨を思わせたり、秋を予感させたりして、涼しさを演出する柄が用いられています。小さな一枚だからこそ、こだわって選びたいものです。

 

縁を結ぶ使い方
贈り物は、袱紗や小風呂敷に軽く包み、左手に持ちます。お渡しするときには、いったん、中身を出し、贈り物の上に小風呂敷をかけなおして先様の前へ。小風呂敷は、いただいた方が外し、小さく畳んでお返しします。

 

一枚の布で結ぶ
 包んで、結んで、運ぶ。中身を出して差し上げたら、小さな一枚の布に戻る――。丸くても細長くても、形に合わせた包み方ができる風呂敷は、その変幻自在ぶりや小さく折り畳める点、何度でも使えるところなどが、エコの視点から見直されています。

 それだけではありません。きれいな結び目はちょっとした飾り、アクセントにも見えます。機能を満たすために結ぶことが、美しい装飾にもなっています。そんな"見せる"風呂敷包みは、風呂敷の素材や柄、季節を取り込んだモチーフなどによって、いっそうの美しさを得ています。この美しさが人の心をひきつけ、人と人とを結びつけてくれます。


心も結ぶ
 和装のときにしばしば用いられる「小風呂敷」は、袱紗(ふくさ)と同じように、贈り物にかけたり、小さなものを軽く包んだりするのに使います。贈り物そのままではなく、そっと小さな布をかける。それはお渡しするものが汚れたり、日に焼けたりしないようにという心遣いから始まったもの。慶弔事の場合は、先方の心中を重んじ、喜びや悲しみを共にする気持ちを表しているとも言われます。

 心と心を結ぶ一枚の布。さりげなくさらっと使えたら、素敵です。


結んだ心を固い絆に
 帯を結ぶ、帯締めを結ぶ、風呂敷を結ぶ。「結ぶ」ということが、着付や包むための機能的な行為であるばかりか、美しさ、楽しさ、さらに人の心持ちまで表現できるとわかったとき、決しておろそかに結ぶことなどできないと感じます。暑い夏もきりっと結んだ帯締めに、涼を感じてもらうことができたら、お会いする人との距離もぐっと縮まるのではないでしょうか。

 これからやってくる本格的な夏、きものを着てどんどんお出かけし、人との結びつきを深め、絆を強めていきましょう。

長沼静きもの学院

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