歌舞伎いろは

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雪が育む越後の織物

満遍なく染め上げた糸を丁寧な手作業でほぐす杉山一郎さん。

上糸と下糸の調子を見ながら、少しずつ図面通りに織り上げます。

 越後の織物の風景として有名な雪晒し。越後の織物全般に行われるものと間違われたりするそうですが、これは越後上布など麻織物だけの工程です。ベテランの職人でも一反織るのに2ヶ月かかることも珍しくないという越後上布。機からおろされた布は足踏み、水洗いの後、晴れ間を縫って新雪の上に晒されます。雪と紫外線の化学反応で発生するオゾンが、布を白く美しくするとか。

 この越後上布の最大の魅力である絣の技を、絹にまで広げたのが塩沢御召や塩沢紬です。強い撚りをかけた絹糸で織り上げたのが、美しい光沢とシャリシャリした質感が特徴の塩沢御召。袷や単用を本塩沢、夏物を夏塩沢と呼び分けています。

 一方真綿を紡いで作った糸で織り上げられるのが塩沢紬。こちらは柔らかな肌触りと軽い風合いが特徴です。絣を括り、染め上げ、織り上げる作業は、現代でもほとんどが手仕事。越後の人々の繊細な心遣いと愛情が、1枚の布に息づいています。

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