歌舞伎いろは

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絶滅が心配された日本産ムラサキ草の根(乾燥済み)。
ほうれん草などの畑の一角で栽培されるムラサキ草。

広がりつつある、伝統技術を支える人の輪。

 紫根染の原料であるムラサキ草は、種から育てて2年目に収穫できる。以前は盛岡のあちこちに見られたらしいこの草も、今ではすっかり姿を消し、現在は絶滅危惧種に指定されるほど。藤田さんが会長を務める「南部ムラサキ保存会」に賛同する農家の手によって、細々と作られているというのが現状だ。夏の終わりに可憐な小さい花をつけたあと、土の上部分は枯れてしまうが、また春が来れば芽を出し、葉を茂らせる。冬の間は根を食い荒らすモグラや鼠との戦い。農家によると栽培そのものは難しくないが、発芽率がわずか数%と極端に低く、育てる過程でも防虫その他に手がかかるそうだ。

 ムラサキ草を栽培しているのは日本だけでなく、特に中国では紫根は漢方薬の原料として栽培されている。「南部ムラサキ保存会」に参加する農家の中にも、自家用の薬として以前からムラサキ草を畑の隅に植えていたという人も。ただし、中国産のものは色が悪く染料としてはあまり質が高くない。やはり日本の紫根染めは日本のムラサキ草が一番。そのために、今年1000株ほどを植えた。収穫は来秋を予定している。

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