歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



古びることのない伝統の良さが生きる上田紬の着物と帯。
上/新しい色を得て、よりいっそう美しさを増す上田紬。 中/左2枚は梅、右2枚はリンゴの木の皮で染めたもの。 下/時代の好みで縞系から無地感覚へ、色も淡く変化。

丈夫で小粋、上田紬の魅力とは

 現在、手織りで上田紬を作り続けている数少ない工房・小岩井紬工房の小岩井武さんによると、上田紬の歴史は300年以上にもなるとか。江戸時代には一大消費地・江戸にそう遠くないこともあって生産量も多く、非常に人気のある織物のひとつだったそうだ。その特徴は縦糸に光沢のある生糸を、横糸にふんわりとした手触りの真綿を使っており、その両方の美点を兼ね備えていること。目が積んでいてとても丈夫なことでも知られており、「三裏縞(みうらじま)」とも呼ばれていた。この「三裏」とは、表地一枚につき裏地を三回取り替えるほど着られるという意味。また「縞」は上田紬の特徴を表したもので、文字通り上田紬といえば縞、そしてそのバリエーションである格子が主なものだったという。時代は移り、着物が日常着だった頃に人気があった、汚れの目立たない濃い色の縞から、外出着らしい淡く優しい色彩でやわらかな印象ものへと、上田紬も変わってきたが、「三裏」の丈夫さは相変わらず。小岩井さんの工房では、地元のリンゴや梅を使った草木染など、時代をとらえた新しい色を加えて、上田紬の魅力を織り続けている。

小岩井工房の代表取締役・小岩井武さんと、跡継ぎのご子息・良馬さん。
   

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