歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



草木染に使われる、リンゴの木の皮はもちろん信州産。

今でも手作業、上田紬のできるまで

 上田紬の工程は養蚕から始まる。信州は気候が涼しいところから、昔から養蚕が盛んで、「蚕都(さんと)」とも呼ばれていたとか。蚕を飼い繭から糸を紡ぐだけでなく、繭を収穫せずにさなぎが蛾になるのを待ち、その蛾が産んだ卵(蚕種という)を収穫して、来年の養蚕のために各地に販売するのを生業とするものも多かった。こうした蚕関連の仕事に従事していたことを示す、上に小屋根のついた屋根の家が、今でも上田で何軒か見られる。小岩井さんの工房も、昭和のはじめまではこの蚕種屋を営んでいたそうだ。上田紬の作り方は、紡いだ糸を染め、高機(たかばた)による手機で織り上げていくという、ごく一般的な手法だが、最近小岩井さんの工房では、上田紬に地元の名産品であるリンゴなどを使った草木染にも力を入れている。草木染は媒染に使う触媒で色が変わるだけでなく、例えば同じリンゴでも使う木によって色が微妙に違うため、それぞれ一点しかない一期一会の味わいがある。こうした滋味を感じさせる色を求めるのも、現代のニーズ。代わることのない確かな品質と、「今だから着たい着物」の魅力を兼ね備え、上田紬は次世代に受け継がれていく。

100年は経つという工房の建物は今も現役。
   
小岩井紬工房

住所

 : 

長野県上田市上塩尻40

TEL

 : 

0268-22-1927

営業時間

 : 

9:00~16:00

定休日

 : 

土、日 祝祭日,年末年始

HP

 : 

http://www13.ueda.ne.jp/~koiwai-tsumugi/

小岩井紬工房で織られてきた柄を記録した端布帳。
上左/リンゴの木の皮を煮出した液に糸を浸ける。
上右/よく乾燥させて色を安定させる。
下左/縦糸を一反分機にかけられるよう準備する。
下右/熟練した織手が筬を走らせ、丁寧に織り上げる。

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