息を呑むほどに美しい八ヶ岳の夜明け。

懐かしい里山の風景、輝く朝日… 四季折々の八ヶ岳に魅せられて

 歴史の表舞台にはあまり登場しない八ヶ岳だが、八ケ岳南麓の標高770~780mの尾根上に、縄文時代後期~晩期の集落跡・金生遺跡があり、すでにその頃ここに人々が集い、集団生活を営んでいたことがわかっている。

 そのほか、武田信玄が川中島に向かってまっしぐらに駆け抜けた『信玄棒道』、江戸時代に置かれた、街道を通る人や物を取り仕切る代官所など、八ヶ岳の歴史を象徴するものはいくつかある。

 八ヶ岳を飛躍的に変えたのは、明治37年に開業した小淵沢駅だろう。都会に近い避暑地としての人気は飛躍的に高まり、華族や政財界人、文化人が別荘を構えるように。人々はさわやかな高原の気候と美しい自然を楽しみ、トップシーズンの八ヶ岳は社交界が引っ越してきたかのようににぎわったという。

 現在も相変わらず避暑地として人気の八ヶ岳だが、避暑に訪れるうちに、ここでのナチュラルライフに魅せられて、生活の拠点そのものを移してしまう人が増えてきた。懐かしい里山の風景、風や温度、土の匂いから四季の変化を体感できる暮らしに、身も心も癒されるらしい。特に、山並みの向こうから昇る朝日、澄みきった空気など、八ヶ岳の朝のすばらしさは感動的。移住者の多くは定年後のセカンドライフを楽しむ夫婦だが、芸術家が多いのも八ヶ岳の移住者の特徴。自然の力をからだに取り込み、創造に励む彼らは、新しい文化圏を、ここに生み出しつつある。

八ヶ岳の自然は四季折々に違った表情で、訪れる人々を虜にする。

歌舞伎と旅

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