歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



単なる紐である水引に、命を与える職人技。

束ねる、重ねる、織り成す。工程も縁起良し

 現在、加賀水引を制作しているのは四代目の津田宏さんだ。

 「結納の品は5・7・9と、奇数にします。現在は7品が多いですね。一そろい水引を作るのに、だいたい2週間くらいかかります」

 和紙の紙縒りに糸を巻いた水引。加賀水引は、腰が強くて形が決まりやすいが、いったんくせがつくと戻りにくく、やり直しが利かない。どれひとつとしてデザイン画や見本があるわけではなく、すべてそのときの職人の感性で、色や形、あしらい物は決まるのだそうだ。

 「加賀水引はすべて、お客様のところに納められるもの。初代や先代の作品を参考にしたくても、うちにはほとんど残っていません。ひとつずつ、手を動かしながら一番美しい形や色を探っていきます」

 繊細なものだけに、結納当日、水引をもっとも美しい形で飾れるように、津田さんが会場まで同行して、飾り付けをすることも。

 「加賀水引は単なる飾り物ではなく、本来『贈る気持ち』を表わすもの。お客様の慶びの気持ちを表現するにふさわしいものを作る。それだけです」


加賀水引の伝統を受け継ぐ津田さんご夫婦。熨斗袋などの文字は奥様が書く。

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