『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿の場』 杉酒屋お三輪の衣裳

『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん) 』杉酒屋娘おみわ。こちらは麻の葉文様の振袖を身につけている。三世歌川豊国画 嘉永5年(1852年) 早稲田大学演劇博物館蔵。無断転載禁©The TsubouchiMemorial Museum, WasedaUniversity, All Rights Reserved.

仏像の装飾や建築物を彩るモダンな連続文様

 正六角形を基本とした麻の葉文様は、形が麻の葉に似ていることから近世になってその名が付けられました。
 文様自体の歴史は古く、平安時代には、金箔を溶かして重ね合わせ細い糸のように切って仏像や仏画に華麗な文様を装飾する「切金(きりかね)」や鎌倉時代の繍仏(刺繍による仏像)の文様にすでに見られ、室町時代には建築、彫刻、染織、漆工などに広く用いられています。


 歌舞伎の中で麻の葉文様は、娘役の襦袢や帯に使われる柄としておなじみです。『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』のお三輪が身につけている帯は、黒繻子(くろしゅす)と鹿の子絞りの麻の葉文様を組み合わせたもの(左写真)。あどけなさ、可憐さを表わす町娘役に欠かせない文様のひとつです。



歌舞伎文様考

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