インタビュー・文 富樫佳織、衣裳写真 松竹衣裳(株)、構成 栄木恵子(編集部)

 歌舞伎の舞台に散りばめられている様々な文様は、暮らしの中で生まれた祈りや四季折々の儀式をモチーフ化し長い歴史を生きてきたものです。
 そんな文様の意味を知れば、歌舞伎を、そして日本をもっと深く理解できるはず。
 東京藝術大学先端芸術表現科教授、伊藤俊治さんのご案内で文様の世界へと誘います。

 今回は、女性の登場人物が身につける鮮やかな衣裳でおなじみの「麻の葉文様」です。
『八百屋お七』を象徴する深紅と浅葱色(あさぎいろ)の鹿の子模様の振袖や、『仮名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場』で遊女お軽が締めている帯、さらには『白浪五人男 浜松屋の場』で弁天小僧扮するお嬢様が袂(たもと)に入れた帯揚げも、麻の葉文様。
 なじみ深い女性の登場人物が身につける文様を読み解くと、麻の葉を介してつながる女性の数奇な運命が浮かび上がってくるように思えます。

  • 其の一仏像の装飾や建築物を彩るモダンな連続文様
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  • 其の二麻の葉から生まれた多彩なヴァリエーション
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  • 其の三連続する文様に織り込まれた、女たちの生き様
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  • 其の四一枚のタイルの物語『薔薇文タイル、英国ヴィクトリアン様式写し』
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歌舞伎文様考

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