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仁左衛門が語る『彦山権現誓助剱』『身替座禅』

仁左衛門が語る『彦山権現誓助剱』『身替座禅』 4月2日(土)から始まる歌舞伎座「四月大歌舞伎」で、昼夜に出演する片岡仁左衛門が、出演演目への思いを語りました。

自分に厳しく母思い、師匠思いの六助

 『彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)』の毛谷村六助は、大阪松竹座の通し上演(平成23年2月)で初演して以来2度目、東京では初めてです。

 

 仁左衛門の思い描く六助像は、「純朴で、穢れを知らない、自分が得をするような駆け引きはしない。仕官にと声がかかっても、自分が磨けていないからと断る。自分に厳しく、そして母思い、師匠思い」。初演では父、十三世仁左衛門の資料映像ほか、先人の映像を見て臨みました。「映像は、一対一で稽古していただいている以上に、こちらから引き出していかないといけません」。テープがすり減るほど見ても、なぜ今まで気づかなかったんだろうと思うこともあったそうです。

 

 先人は直接語りかけてはくれませんが、音声を聞いたり映像を見たりして学びとり、「常に新しい気持ちでその役、その場面に接する」ので、「たとえ嫌いだと思っていた役でも楽しくできるのが、自分に対しての強み」と語りました。

 

 5年前まで六助を手がけなかったのは、「話をお客様にわかっていただけないと、演者としてやりがいがないから」。今回は「毛谷村」の前に「杉坂墓所」を上演し、話をわかりやすくしています。

 

 六助とお園が一瞬にして惚れあってしまうところなど、「そんな馬鹿な!というところもある芝居ですが、それをほんのりとお見せできたら」と意気込みます。「時代狂言は決まりごとがあって、はみ出してはいけない枠がある。その中で人物をいかに生き生きさせるか」、やってみると楽しくなってくると語りました。

 

右京になりきることに徹する

 昼の部の『身替座禅』の山蔭右京は、東京では8年ぶりに勤めます。「心がけているのは、お客様を笑わそうとしないこと。持仏堂があり、何人も召使のいる家の右京は、京の上流社会の人ですから、それなりの品格が必要です」。だから、奥方を置いて浮気をするにも「上品に」。

 

 花子のもとからの帰り道、2度目の花道の出での酔態が肝心で、「正直申しますと、初演の頃はお客様を意識しておりました。今はいたしません。お客様に受けても受けなくても、気持ちよく右京になりきり、楽しかったことを思い出しながら、うらうらと帰ってきます」。笑わせようと思えばいくらでも笑わせられるけれど、「笑いは深いところから出てこないといけない」と、語りました。

 「先人の映像の隅々まで汲み取る、役の気持ちまで汲み取る」ことを自らに課し、そして、自分のチェックを怠らないこと…。剣術の腕磨きに厳しい六助と同じくらい、仁左衛門が「自分を磨く」姿勢には厳しさがありました。

 

 歌舞伎座「四月大歌舞伎」は、4月2日(土)から26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

2016/03/26