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時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

 5月7日(土)から始まる、METライブビューイング『蝶々夫人』について、時蔵が現地でのメトロポリタン・オペラの鑑賞体験を交えて語りました。

 先日、歌舞伎座ギャラリーで開かれた「歌舞伎夜話」において、プライベートの旅行でニューヨーク・メトロポリタン歌劇場(MET)を訪れた際の感激を語っていた時蔵。その際に鑑賞したプッチーニ作の『蝶々夫人』が、早くも映画館でメトロポリタン・オペラを楽しむ「METライブビューイング」で上映されることとなり、あらためてその作品の魅力を語りました。

 

 クラシック音楽を嗜むことから、時折、オペラには足を運んではいたものの、海外のオペラハウスを訪れたのは今回のMETが初めてだったと言います。「オペラ好きの玉三郎のお兄さんから、以前にMETのライブビューイングはなかなかいいよと勧められまして、これまでに何作か映画館で観ておりました。それで今回、ニューヨークの滞在中にぜひ本物を体験したいと思ったわけです」。

 

時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

 「実は、『蝶々夫人』を拝見したのは現地に到着した日の夜でしたから、客席で眠ってしまうのではないかと心配していたんです。しかし、その芸術性の高さに圧倒され、眠るどころか最後まで大変に面白く拝見できました」

 

 『蝶々夫人』は、日本を訪れたアメリカ海軍士官のピンカートンと恋に落ちた、没落士族の娘である蝶々さんのひたむきな愛を描いた悲劇です。蝶々さんを演じているのは、“歌う女優”ともいわれるクリスティーヌ・オポライス。「あれだけ大きな劇場で、オーケストラをバックにあれだけ響かせられるわけですから声量がすごいんですね。特にラストシーンは、鮮烈な演出も相まって素晴らしかったです」

 

時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

 また、外国人演出家が描く“日本”にも、興味をひかれたと話します。演出はアカデミー賞監督であるアンソニー・ミンゲラ。「大変にびっくりしたのは、まさに歌舞伎と文楽の要素が巧く取り込まれていたことでした。第2幕で蝶々さんの子どもが登場するのですが、その子どもが人形で、文楽のように3人の黒衣の方がそれを動かしているわけです。その遣い方は少し違うのですが、確実に影響は受けているでしょうね。日本の文化を勉強されたのだと思います」。

 

時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

 「また、黒衣の方が差し金を使う面も、大変に面白く拝見しました。歌舞伎なら蝶を飛ばしても2羽ですが、たくさんの差し金を駆使して何羽も飛ばす場面があり、それがとても美しいんです。吊り枝みたいな装置もあり、こんな演出もできるのだなと勉強になりました。色彩の組み合わせでしたり、ホリゾントや鏡を使った装置など、逆に日本人じゃない方が手がけたことがよかったのではないでしょうか」

 

 「お侍さんの髷(まげ)や裃(かみしも)、芸者の髷など、見よう見まねでつくったのだろうと思う部分もありますけれど、外国人からは日本はこんなふうに見えるものなのだと興味深かったです」

 

時蔵がMETライブビューイングの魅力を語る

  『蝶々夫人』を鑑賞したメトロポリタン歌劇場の前で

 ニューヨークでの感激を再び日本で味わえるとあって、今回のMETライブビューイングへの期待度は高いようです。「なんといっても、字幕が出るのはやはりうれしいですよね。カメラが寄ってくださるから、客席からはわからない表情なども確認できますし、生の舞台とは違う面白さがあります」。また、映画館では、幕間の休憩時間で、舞台裏での歌手やスタッフへのインタビューが流れるのも面白いですね、と話していました。

 

 歌舞伎もオペラと同様に、過去に書かれた傑作が、長い年月の間にレパートリーとして定着し、繰り返し上演されている舞台芸術です。「どちらも、お話自体はシンプルなものなんですよね。でも、そこに演じ手自身の人生経験を加えて表現することで、厚みが生まれ、それぞれの舞台の魅力が引き出されてくるのだと思っています。こういう芸術性の高い作品を観て得た経験もまた、いつか私のなかで昇華され、何かの形でお客様に伝わるものになればと願っています」。

 

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METライブビューイング2015-2016
プッチーニ 『蝶々夫人』

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日時
2016年5月7日(土)~5月13日(金)
※東劇のみ 5月20日(金)までの2週間上映

 

上映時間
3時間26分(休憩2回)

 

チケット(税込)
一般 3,600円

学生 2,500円

 

上映劇場

東劇ほか全国17館

上映劇場一覧はこちら

 

METライブビューイング プッチーニ『蝶々夫人』公式サイト

 

(C)Ken Howard/Metropolitan Opera, Marty Sohl/Metropolitan Opera

2016/05/04