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愛之助が語る「第九回 永楽館歌舞伎」

愛之助が語る「第九回 永楽館歌舞伎」

 

 

 11月4日(金)から始まる、出石永楽館「第九回 永楽館歌舞伎」に出演の片岡愛之助が、公演に向けての意気込みを語りました。

 平成20(2008)年の夏に往時の建物を復元した出石永楽館。復活した永楽館の柿落で始まった「永楽館歌舞伎」は、今年、第九回を迎えます。第一回から公演を引っ張ってきた愛之助が、「お客様には、はるばる永楽館までお越しいただくのですから、もし自分が切符を買うのなら、めったに見られない役を見たいと思いますので、毎回、何か初役を勤めたいと思っております」。今回、挑戦するのは『輝虎配膳』の輝虎です。

 

上方の俳優で幕を開ける『輝虎配膳』 

 「十三世仁左衛門、伯父の我當が勤めており、一度は勤めたいと思っていた魅力ある狂言。我當に習おうと思っております」。輝虎が味方にとり込もうとする軍師山本勘助の妻お勝に壱太郎、母越路に吉弥。さらに、家老の山城守を千次郎、その妻で勘助の妹の唐衣を千壽と、上方歌舞伎塾の一期生二人が重要な役を勤めます。「上方の役者で芝居が開けられたらという思いもあり、うれしい公演です」と、愛之助は顔をほころばせました。

 

 我當の歌舞伎鑑賞教室などで、かつては自分も役をつけてもらい、若手にも役がふられていたことに触れ、「そういうことが大事だなと思い、自分も師匠たちの背中を見て、できる限りのことをしていきたい」と、歌舞伎のために尽力しようという強い思いを見せ、そのための一つの場として「永楽館歌舞伎」が大切であることに触れました。

 

ご当地狂言の『春重四海波』 

 もう一つの演目は『輝虎配膳』とはがらりと趣きを変え、「切り狂言は賑やかに、笑っていただけるものがいいのではと、曽我廼家五郎(筆名、一堺漁人)が明治43(1910)年に初演した『四海波』を、歌舞伎にして上演します」。武術指南役の一人娘のところに名家からやって来た婿養子、頼母役を演じるのが愛之助。「20代、40代、60代と段階的に年齢を重ねる筋立てですが、本格的な老け役は初めて。ドキドキしながら勤めたいと思っております」と、うれしそうに語りました。

 

 平成5(1993)年には中座と南座で松竹新喜劇の公演で上演されていますが、歌舞伎として上演するのは初めて。今回はご当地狂言として、物語を出石藩に置き換えて名物なども取り入れ、「結末を原作と同じにするか、新たにつくるのかはまだ決まっていません」とのこと。五郎劇を下敷きにした喜劇作品に初めて取り組むことに、愛之助自身がワクワクしている様子が見えました。

 

来年は節目の10年を迎える「永楽館歌舞伎」 

 「お客様との距離がものすごく近い。どの席でも舞台に手が届くように見られます」。愛之助がアピールしたのは、約350席というコンパクトな劇場空間の距離感というより、舞台と客席との親近感、劇場の一体感で、それこそが「永楽館歌舞伎」の魅力です。毎回、客席を沸かせる「お目見得口上」は、「その場で思いついたことをお話させていただいている」そうで、今年もおおいに期待できそうです。

 

 愛之助いわく、城下町出石の民家の間にまぎれるように建つ永楽館は、どこかタイムスリップしたような感覚になる場所――。「そんな素敵な劇場はほかにありません。9回も勤めさせていただいて役者冥利に尽きます。永楽館は第二の故郷。私をいろんな意味で成長させてくれたところで、思い出がいっぱい詰まった場所です。できることならずっと公演を続けていきたい」との言葉には、永楽館への愛情がたっぷり込められていました。 

 出石永楽館「第九回 永楽館歌舞伎」は11月4日(金)から11日(金)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて、9月20日(火)10:00より発売予定です。

2016/08/31