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猿之助、勘九郎、七之助が語る大阪松竹座「五月花形歌舞伎」
5月2日(火)から始まる、大阪松竹座新築開場二十周年記念「五月花形歌舞伎」に出演の市川猿之助、中村勘九郎、中村七之助が、公演に向けての思いを語りました。
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数年前までは「新春浅草歌舞伎」で、「年1回会うことが当たり前だった」と猿之助のいう三人が、8年ぶりにそろって大阪松竹座の「花形歌舞伎」に出演します。「一緒に芝居をしていた時間は私にとって宝物」と勘九郎が言うと、七之助も「三人で芝居、が懐かしい。お互いの呼吸がわかっているし」とにっこり。今回の大阪での公演を、三人が本当に喜んでいることが伝わってきました。
公演中に迎える宙乗り1000回
幕開きは、浪花と江戸のお国自慢から始まり、禿が加わって京、大坂、江戸の廓話をする『戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)』。「歌舞伎のもつばかばかしさというか、大らかさをお見せできれば」と語った勘九郎の次郎作に、歌昇の与四郎という新鮮な組み合わせは、当の勘九郎も楽しみしている様子でした。
三代猿之助四十八撰の内『金幣猿島郡(きんのざいさるしまだいり)』は、「初めはいっぱいいっぱいでしんどかったが、やればやるほど無駄な力が抜けてきて楽になってきた」という猿之助が、3度目の上演に挑みます。この公演中には宙乗りが1000回を迎えますが、「意外とあっという間だった」と、力みは感じられません。「でも、伯父(猿翁)の記録にはあと4000回はしないと」と続けると、隣で聞いていた勘九郎、七之助のほうが驚嘆。
今回は清姫と忠文のくだりに絞った上演で、「嫉妬の話で、『道成寺』のパロディーだし、わかりやすい」。勘九郎、七之助はともに初めての出演です。
「(早替りや宙乗りなどの演出が)趣向に終わってはいけない。清姫も忠文も出番は短いけれど、それぞれの人物像をしっかり見せておかないと、(切の)『双面道成寺』の面白さがなくなります。猿翁の伯父は“人ならざる者”の役が非常に面白かったのですが、狂言師升六が中性の雰囲気で出てくるところは難しい。私は女方をしていたので、どうしても立役が弱かったけれど、最近は立役をすることも増えたので、そのあたりを克服したいと思っています」と、意気込みを見せました。
『乳房榎』を大阪で上演できる喜び
夜の部は、七之助が3年前の歌舞伎座以来、2度目のお光を勤める『野崎村』から。「今回はおっかさんが出ませんけれども、おっかさんがいる心持ちでやります。大阪で兄がお光を演じたとき(平成16年10月大阪松竹座)、芝居がお客様にぱっと浸透していったのが印象に残っているので、その大阪のお客様の前でさせていただくのが楽しみ。義太夫狂言なのできちっとやるなかで、心情がより深く乗るよう、誠実に勤めたい」と、意欲的に語りました。
続いては『怪談乳房榎』。上方の歌舞伎俳優だった三世實川延若が復活上演させたものが、十八世勘三郎、そして勘九郎と受け継がれてきました。「父が上演するときは必ず延若のおじ様の名を入れると言っていましたので、今回もそうしています。もともと大阪の匂いのする芝居ですから、大阪での上演でそれがうまく出せたら」と、勘九郎。
ニューヨークを含め数多くの劇場で上演され、演出にも違いがある演目です。また、「猿之助四十八撰以外であまり悪人をしたことがない」という猿之助が、初役で浪江を勤めます。「(大滝の立廻りのあとは)父も試行錯誤していて、最終的に円朝が出てきて終わるところに落ち着きました。今回は、猿之助さんが浪江ですから、知恵をお借りして大詰が面白くできればいいなと考えています」と、勘九郎は共演を心待ちにしているようでした。
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8年前の大阪松竹座での「花形歌舞伎」は、前月の「新春浅草歌舞伎」に続いての公演でした。「浅草のパワーは一生忘れない。本当に楽しかった」(勘九郎)、「充実感があったし、お客様の熱もすごかった」(七之助)。ふた月続いての公演は三人の記憶にも鮮明に残っているようです。「あの頃は余裕がなかったけれど、今はいろんな意味で楽しめると思う。修業してきたからこそ、お客様も楽しみにしてくださる」(猿之助)。再会の舞台は同じ「花形歌舞伎」でも、8年分の成長をぶつけ合い、いっそう熱を帯びることは間違いないでしょう。
大阪松竹座「五月花形歌舞伎」は、5月2日(火)から26日(金)までの公演。チケットは4月5日(水)より、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹にて販売予定です。