ニュース
愛之助が祝う「明治座 五月花形歌舞伎」こどもの日
5月3日(水・祝)に開幕した「明治座 五月花形歌舞伎」で、5日(金・祝)のこどもの日に、出演の片岡愛之助が地元の小学生とふれあいました。
▼
初日から3日目のこどもの日。明治座に近い久松小学校の児童30名が、「明治座 五月花形歌舞伎」に招待され、昼夜にわたり出ずっぱりの活躍を見せる愛之助と開場前に対面しました。明治座の近隣ということもあってか、歌舞伎を観たことがあるというお子さんが多いことがわかり、愛之助は「うれしいな」と、にこにこ話し始めました。
「私は歌舞伎を観るより前に、出させていただいたんです。それで初めて歌舞伎を観て以来、今までずっと歌舞伎が好きです」。愛之助は千代丸の名で9歳で歌舞伎俳優となりましたが、「そもそも児童劇団に入っていたところに、歌舞伎へ出てみませんかとお話をいただきました。実は、歌舞伎に出ている子役さんで児童劇団の子は多いんです。皆さんもよかったら出てみませんか」との呼びかけには、お子さんたちよりも周りの保護者の方々のほうから声が上がりました。
事前に寄せられたお子さんからの質問で健康管理について聞かれ、「よく食べ、よく眠ること。人間って睡眠が欠けると、私の場合は声が出なくなるし、意識が散漫になってつまずいて怪我をしたりします。出番の前には必ずストレッチもします」など、丁寧に話しかけるように答えた愛之助。最後はお子さんたちに、「私も芝居の間に話をしています」というイヤホンガイドと、柏餅をプレゼントしました。お返しに、朝から寄せ書きをしたという鯉のぼりを贈られた愛之助は、「感動です。時間をかけてくれてありがとう。うれしいです。楽屋に飾りたい」と、笑顔をはじけさせました。
▼
「明治座 花形歌舞伎」の昼の部は『月形半平太』から始まります。愛之助が「難しい言葉はそんなに使っていないので、初めてご覧になる方でもわかりやすい」と、小学生を前にアピールしたとおり、幕末の激動の時代が、一人の長州藩士の生き方を通して鮮やかに描かれます。
月形の独特の月代(さかやき)、着流しで見せるスピード感あふれる立廻り。「この国の行方を見届けるまでは、この月形は死なぬ」とゆるぎない信念を見せる一方、「芸妓の間夫」とさらりと言い放つところまで、あらゆる意味で潔く格好いい月形に、舞台上だけでなく客席もひかれます。
「春雨じゃ、濡れてゆこう」の名せりふだけでなく、「武士の意地は芸妓の達引」など、心に響くせりふの数々は、最後の月形の辞世の句で極まります。幕末の空気にたっぷり浸れる芝居になりました。
続く楳茂都『三人連獅子』は、清涼山の石橋がつくられた舞台に、親獅子、母獅子、子獅子が人間の姿で登場するところから始まります。この日の舞台には、開場前、愛之助へ贈られた児童たちの鯉のぼりが、霊山の滝を昇っていました。
松羽目の舞台で踊られる『連獅子』よりも、母に甘えるように戯れる子と、その子を慈しむように接する母の関係があるぶん、親獅子の厳しさが際立ち、そこから這い上がる子の強さと親の慈愛が印象に残ります。三人の毛振りは徐々に勢いを増し、大きな拍手とともに幕となりました。
夜の部は『南総里見八犬伝』。今回は発端に玉梓の話がとり入れられ、長い物語の始まりが明示されることで、ストーリーがいっそうわかりやすくなっています。愛之助が児童たちに、「ドラゴンボールのような不思議の玉を持った勇者のお話」と語っていたように、現代人にも響くファンタジーの世界で、大活躍するのが若手俳優たちです。浜路(新悟)と信乃(米吉)の恋を邪魔する左母二郎(隼人)や、額蔵(橋之助)、毛野(壱太郎)、大角(種之助)、小文吾(隼人)、親兵衛(福之助)のだんまり、信乃と現八(萬太郎)の大立廻りと、それぞれの見せ場もたっぷり。
そして、鴈治郎が蟇六と扇谷定正で芝居を引き締め、愛之助の道節が八犬士をまとめます。物語の面白さと俳優たちの活躍にわくわくさせられる一本で、しかも、名場面を漏らさず入れ込んだ明治座版『八犬伝』の誕生となりました。
▼
「明治座 五月大歌舞伎」は、5月27日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほか、明治座にて販売中です。