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尾上右近が歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で清元初お目見得

尾上右近が歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で清元初お目見得

 11月2日(金)から始まる歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」の昼の部『十六夜清心』で、尾上右近が清元栄寿太夫として初お目見得します。

 菊五郎の清心に時蔵の十六夜で見せる『十六夜清心』の舞台で、父の延寿太夫のワキを語るのが、今年2月に七代目として父の前名、栄寿太夫を襲名した右近です。三味線に兄の清元斎寿も並び、親子三人がそろっての出演を喜ぶ右近にとって、なによりもうれしいのは、「歌舞伎の興行に清元の太夫として出る機会があるならば、菊五郎のおじさんの舞台で初舞台を踏みたい」との、襲名以来の願いがかなうことです。

 

 「初めは、何日か並ばせていただきたいと、父がお願いに上がったのですが、せっかくだからひと月やったほうがいいと」、菊五郎から望外の言葉をもらい、感謝してもしきれないと身を引き締めました。今は、「不安を抱くのも贅沢」と、ひたすら前を見つめて稽古に励んでいます。

 

『十六夜清心』という大曲での清元初お目見得

 遊女十六夜と馴染みになって寺を追い出された清心と、身ごもって廓にはいられない十六夜が、もう死ぬしかないと心中に至るまでを語るのが、清元「梅柳中宵月(うめやなぎなかもよいづき)」です。小さいときから延寿太夫の出演舞台を見ている右近にとっては、「清心といえば菊五郎のおじさん」でした。

 

 幕開きから上手(かみて)の山台に座り、タテの延寿太夫が主に十六夜の心情を語るのに対し、右近はワキとして清心の心の内を聞かせます。曲の途中には清心と十六夜のせりふも入ります。「菊五郎のおじさんのせりふのあと、自分が唄う瞬間は、ものすごくグッとくると思います」。

 

 せりふと清元の受け渡しは難しいことではありますが、「歌舞伎俳優としてせりふの語尾を次の人、義太夫さんや地方さんに渡すことはありました。そういうときに渡される側の気持ちを考えながらやってきたので、清元として渡される側の実感も自分の中にはあり、なんら違和感はありません。女方と立役の両方をやって、どうしたら立役がやりやすいか考えるのと同じです」。

 

尾上右近が歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」で清元初お目見得

俳優と太夫、全部真剣にやる

 右近は2月の襲名披露の舞台で清元として出演し、「これは、山台に乗って役者を見て唄う、という“役”なんだなという感覚をもちました」。歌舞伎俳優のなかでも、「僕しか経験できない役」を勤めるという感覚。それは、歌舞伎俳優であり、清元の太夫でもあるという二足のわらじを、どう履き替えるかではなく、「実感としては、すべての発信源は自分」。だから、行き着くところ、「根本は人間修業」であり、結果としてバランスをとるのでなく、「全部真剣にやる」ことに至ったと語りました。

 

 昼の部では『お江戸みやげ』で役者の栄紫と駆け落ちするお紺、夜の部では『隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)』で、法界坊にすり寄られるおくみを勤め、後半の「双面水澤瀉」では怨霊となった法界坊と踊りも見せます。法界坊は猿之助。「歌舞伎座で猿之助のお兄さんと共演させていただくのは、夢でもありました」。お客様を楽しませようと、真剣に遊ぶ姿勢、精神を猿之助に見て、自身も「日常を忘れさせるのが歌舞伎なら、歌舞伎をやる側も日常を忘れて夢中になる」と、思うようになったと明かしました。

 

清元の経験を積むために

 稽古は、プロとしての声を1カ月出すのに耐えられる喉をつくることから始まっています。小さい頃から父の延寿太夫に稽古をつけてもらい、高校生になってからは、「六世延寿太夫の語り方をよくご存じの先輩で、教わらなければならないことがたくさんある先輩」、人間国宝の清寿太夫にも教えを仰いでいます。身内に甘えることなく、「この瞬間しか聞けないという思いを抱いて先輩に教えを乞うことが、教わる側の心構え」。歌舞伎の修業で培った経験則が清元でも生かされています。

 

 今回は女方2役で、せりふにも清元にも「どちらにも助けになる」と言いますが、「立役の喉をよく使う役だと、清元とは喉の使い方もだいぶ違ってくるので、いずれはそれを両立させる声もつくっていかないと」、と目標を掲げました。清元は、高音が多い、節回しが細かいといった特徴があり、江戸浄瑠璃として江戸弁のイントネーションがそのまま唄になっている部分があると言います。そして、「内容も節回しも艶っぽい。それを伝えられるように頑張りたい」。11月の舞台が楽しみになる言葉で締めくくりました。

 歌舞伎座百三十年「吉例顔見世大歌舞伎」は、11月2日(金)から26日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹で、10月12日(金)発売予定です。

 

※双面水澤瀉の「瀉」のつくりは正しくは“わかんむり”です。

2018年10月09日

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