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3年ぶりに浅草で幕を開けた「平成中村座」

3年ぶりに浅草で幕を開けた「平成中村座」

 

 11月1日(木)、浅草寺境内で、平成中村座「十一月大歌舞伎 十八世中村勘三郎七回忌追善」が初日の幕を開けました。

 十八世中村勘三郎七回忌の追善公演、10月の歌舞伎座に続く11月は、勘三郎の夢を実現させた平成中村座での公演です。今年はスペインのマドリードに続く平成中村座の公演ですが、浅草では3年ぶり。櫓の“隠れ勘三郎”が、開場とともに詰めかけたお客様をぎろり、とひとにらみ、一気に懐かしさがこみ上げてきました。

 勘九郎が3度目の実盛を勤める『実盛物語』。颯爽とした生締役で、複雑な心境にある実盛が、目に鮮やかな所作で物語を聞かせ、場内をぐいぐい引き込んでいきます。可愛らしい太郎吉は長三郎で、実盛との微笑ましいやりとりにお客様もにっこり。瀬尾が太郎吉に手柄をたてさせるためにわざと斬られるところでは、亀蔵が平馬返りを見せて客席を沸かせ、実盛が太郎吉を自分の馬に乗せると、追善にふさわしい子と孫の共演の絵ができました。

 

 七之助が本興行では初役で勤める『近江のお兼』は、花道から暴れ馬が飛び出して始まりました。馬を追いかけてきたお兼はたやすく馬を手なずけ、馬と息ぴったりの軽快な踊りを見せます。高下駄に布晒を手にしての踊りでは、父のお兼が大好きだったという七之助の思いが、晒の起こす爽やかな風に乗って客席に届きました。

   

 昼の部の切は『狐狸狐狸ばなし』。十八世勘三郎が納涼歌舞伎で35年ぶりに復活させて以来、人気演目となり、平成中村座でも上演を重ねています。今回は扇雀の伊之助に七之助のおきわ。おきわは、しつこい蛇男のような夫の伊之助に辟易、間男の法印には浮気相手の牛娘と別れるようにと迫ります。法印は芝翫。法印と一緒になるため、おきわが伊之助を殺すところから話は二転三転、だましだまされの物語に客席が何度も大きく沸きました。

 夜の部は『弥栄芝居賑(いやさかえしばいのにぎわい)』から。勘九郎と七之助が中村座の座元夫婦となり、勘太郎、長三郎とそろって、扇雀、芝翫、鶴松とともに劇中口上を述べます。花道には16人の男伊達、女伊達が並び、それぞれが勘三郎との縁や思い出、浅草や平成中村座を折り込んでのツラネは、追善興行ならではです。

 

 『舞鶴五條橋』は、十七世勘三郎から親子で踊れるものをと請われて、『大江山酒呑童子』と同じく萩原雪夫が書き下ろした舞踊です。祖父、十八世勘三郎が勤めた牛若に、勘太郎が挑みました。十七世勘三郎が勤めた2役は、常盤御前を扇雀、荒法師弁慶は勘九郎が演じます。母常盤御前との場面では愛らしさの立った牛若が、後に「私は源の牛若なり」と名のりを挙げて弁慶と斬り合う場面では、凛々しさとたくましさを感じさせ、その姿に幼き日の十八世勘三郎が重なりました。

 

 切は『仮名手本忠臣蔵』「七段目」。10年前の平成中村座で、『忠臣蔵』を4バージョンに分けて上演した際、「七段目」の平右衛門とおかるを、初めて勘九郎(当時 勘太郎)と七之助のコンビで上演しました。今回、由良之助もそのときと同じ芝翫(当時 橋之助)で、勘三郎が平成中村座で古典を忠実に上演したかったという願いを、あらためてかなえるひと幕となりました。宴の席では勘三郎を偲ぶくだりもあり、お客様の心にもさまざまな思い出がよみがえったところで、初日の幕が降りました。

 平成中村座「十一月大歌舞伎」は、11月26日(月)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹ほかで販売中。また、5日(月)、12日(月)、15日(木)の「平成中村座 座談会」のチケットも同じく販売中です。 

2018/11/02