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『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

 『新説諸国譚 TAMETOMO』 左より、片岡愛之助、中村壱太郎

 2月22日(金)・23日(土)・24日(日)、徳島県 大塚国際美術館システィーナ・ホール「第九回システィーナ歌舞伎」で、『新説諸国譚(しんしょこくものがたり) TAMETOMO(ためとも)』が上演されました。

 会場のシスティーナ・ホールに入って真正面に、あのヴァティカンのシスティーナ礼拝堂の主祭壇にある、ミケランジェロの「最後の審判」の陶板名画。ホール中央の長方形の舞台から、入口とこの名画をつなぐように花道が延び、合計4方向から出演者が出入りをするというしつらえです。客席最前列から手を伸ばすと舞台にふれるほどの距離で、お客様が舞台を囲む中、地元の徳島室内楽団による弦楽四重奏で『新諸国物譚 TAMETOMO』が始まりました。

 

 保元平治の乱に敗れた源為朝(愛之助)は、巻き返しを図ろうと肥後の海を都へと船を進めますが、士気を高める一行を、大きな嵐が襲います。綱で囲まれただけの舞台上を転げまわる様子と、激しい太鼓の音で、荒波までが見えてきます。為朝の妻、白縫姫(壱太郎)は弟橘姫が身を呈して風雨を収めた話に寄せて「夫を思う気持ちに変わりなし」と、生贄となって海に身を投じます。しかし、為朝も一子舜天丸も嵐にのまれてしまいました。

 

 舞台装置のないシスティーナ歌舞伎では、6人の踊り手が浪の精や女官となって踊り、音楽を弦楽四重奏から長唄と囃子へというように、洋から和の音楽に変えて場面を転換します。琉球王国へも、琉球音楽と沖縄舞踊でひとっ飛び。尚寧王(関口義郎)が寧王女(ねいわんにょ、壱太郎)に王位を譲ろうとするところへ、それを阻止しようと第一夫人の中婦君(吉弥)と国相の利勇(國矢)が現れ、宋から招いた蒙雲(もううん、猿弥)を王位に就けようとして対立します。蒙雲は壁画の迫力を背景にまがまがしい登場を見せました。

 

 決断できない王は神様に判断を仰ごうと言い出し、琉球の華やかな衣裳で登場した王の忠臣、陶松寿(愛之助)を擁する寧王女側が、神様であるお客様の大きな拍手を浴びました。神様のえこひいきと愚痴る中婦君、それをなだめる利勇の二人が客席を笑わせます。ところが、事はそれで終わりませんでした。蒙雲の妖術にはまった王と、寧王女の母、廉夫人(折乃助)が命を落とし、その首を手にした中婦君の不気味な高笑いがホールに響き渡ります。そして、命を奪われた寧王女の体には白縫姫の霊魂が乗り移り、琉球に流れ着いて加勢した為朝は、そこで白縫姫の魂との再会を果たしました。

 

『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

 『新説諸国譚 TAMETOMO』 左より、舞羽美海、片岡愛之助

 一方の陶松寿は、武芸大会の優勝者と結婚させられてしまうという真鶴(舞羽美海)に助けられ、恩返しにとその大会に出場することに。と、突然舞台にロープが張られてリングアナウンスが流れ、陶松寿が華麗な足技をかけて優勝。真鶴の島唄もあり、エンタテインメント満載のシスティーナ歌舞伎では、さまざまな歌舞伎とのコラボレーションを見せます。勝利の喜びもつかの間、蒙雲に立ち向かった陶松寿はあえなく毒殺されてしまいました。

 

『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

 『新説諸国譚 TAMETOMO』 左より、市川猿弥、上村吉弥

 為朝は喜平次(千次郎)が守り育てた舜天丸と再会、仙女魔琳(吉弥)のお告げで、天地の神々の守護を得る剣を手に、琉球王国のために戦います。為朝と白縫の魂が入った寧王女が見せる琉球組踊りは大きなみどころ。そして、第二幕のもう一つのみどころが、迫力満点の大立廻りです。弓を持っては天下無双の為朝が、ホール上方のバルコニーから蒙雲に一矢放ち、寧王女も戦えば、喜平次と利勇の対決もあり、為朝のぶっ返りで華やかな勝利がうたい上げられ、舜天丸が琉球の国王の座に就いて大団円。最後は大きな拍手がホールを包み込みました。

 

『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

 『新説諸国譚 TAMETOMO』 左より、中村壱太郎、市川猿弥、片岡愛之助

 ◇

 1回目の上演を終えた愛之助は、「お客様にどう反応していただけるか、ドキドキでした」と言いながらも、芝居の進行につれて盛り上がった客席に安堵の表情。愛之助と初めて組踊りにとり組んだ壱太郎は、「日本舞踊や歌舞伎に近いところにあるという印象で、もっと深めていければいいなと思いました」。手と足を左右同じ側から動かすところに戸惑いもあったようですが、一番の苦労は琉球のせりふでした。

 

 「最初は丸暗記して覚えました」と愛之助が言うと、壱太郎も「録音して繰り返し聞きました」とうなずき、愛之助は道を歩きながらもぶつぶつそらんじていたと明かしました。その苦労はなかった舞羽はというと、初めての360度客席の舞台に、「お客様の笑顔でよけい緊張し、人生にこれ以上ないほど緊張しました」と、まだ緊張が解けていない様子。愛之助が「死角がないので、後見が入るのも含めて見てください、というのがシスティーナ歌舞伎」と続けると、「すごくいい経験になりました」と笑顔を見せました。

 

 第九回を迎えたシスティーナ歌舞伎。「こちらにうかがうと、ただいま、という感じで落ち着きます。温かみもあり、ここはやっぱりすごいなと」、システィーナ・ホールが持つパワーを感じるという愛之助。システィーナ歌舞伎ならではの魅力をご体験いただける作品になったと、強い手応えを見せました。

 

『TAMETOMO』に大きく沸いたシスティーナ歌舞伎

 『新説諸国譚 TAMETOMO』 前列左より、市川猿弥、舞羽美海、片岡愛之助、中村壱太郎、上村吉弥

2019年03月06日

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