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仁左衛門が語る「松竹大歌舞伎」西コース

仁左衛門が語る「松竹大歌舞伎」西コース

 

 4月1日(水)より全国20会場で行われる「松竹大歌舞伎」西コースについて、出演の片岡仁左衛門が語りました。

 今年度の(公社)全国公立文化施設協会主催による歌舞伎公演は、西コースを4月、東コースを5月、中央コースを9月に開催予定。西コースでは、舞踊『正札附根元草摺(しょうふだつきこんげんくさずり)』と、『義経千本桜』「木の実」「小金吾討死」「すし屋」が上演されます。『義経千本桜』でいがみの権太を勤める仁左衛門は、「非常に楽しみにしております」と、にこやかに挨拶しました。

 

仁左衛門が語る「松竹大歌舞伎」西コース

愛を大事にしている悪

 仁左衛門は、過去に何度も演じてきた、いがみの権太に対し「権太は、決してならず者ではない。悪いことはしますが、根は善人で、大人になってもどこかかわいい、憎めない」人物だと語ります。「夫婦愛、子どもへの愛、そして親への愛を、非常に大事にしている悪。そういうところが私は魅力だと思う」と、自身の考えを明かしました。

 

 「夫婦と子どものアットホームな雰囲気を出しておかないと、そのあとの場面で、自分の子どもと女房を犠牲にした悲劇が浮き彫りにされない」という考えから、仁左衛門が権太を演じる際には「すし屋」の場面だけでなく、「木の実」と「小金吾討死」も上演されることが多いと言います。「昔のお客様はストーリーの背景をご存じだった。今のお客様はその場しかご存じないと思いますので、分かりやすくご理解いただけるように、そういう場面を付ける工夫をしております」。

 

 多くのお客様に楽しんでもらうために「台本もずいぶん書き換えているんです。わかりにくいところをカットしたり、回りくどいところを端的に説明したり。義太夫の丸本と、従来歌舞伎でやっている台本を、もう一度練り直しています。私の自信作です」と、満面の笑みでアピールしました。

 

先人が残してくれた歌舞伎を守る

 今回披露する演目のみどころは「愛」だと強調する仁左衛門。「いつも申し上げるのですが、愛ですね。親子の愛、主従の愛。そして義理、人情。今は残念ながら薄れてきている部分がありますが、もう一度気がついていただけるように」演じたいとのこと。「歌舞伎というものは、愛を大事にしているドラマが多い。決して堅苦しいお芝居ではございません」。

 

 全国各地での公演は「普段、歌舞伎をご覧いただくことが難しい方に観ていただけるチャンス。私たちは先人が残してくれた、この伝統歌舞伎を守っていかなければならない使命がございます。それにはやはり、多くの方々のご支持を得ないと。歌舞伎座や、大阪、京都の劇場などに足をお運びいただけないお客様に観ていただいて、歌舞伎のファンを増やしたいという気持ちでいっぱい」と、胸の内を明かしました。

 

 仁左衛門は、「今回の狂言はあくまでも古典。初めて歌舞伎をご覧いただく方にもご理解いただける、良かったと思っていただけるように頑張りたい」と、覚悟をにじませます。共演する後輩たちには、「舞台に立つ者の姿勢、そして役のとらえ方、せりふ、所作。しっかりと受け継いでほしい」と、エールを送りました。

 「松竹大歌舞伎」西コースは4月1日(水)から4月26日(日)まで、全国20会場で開催。チケットの詳細は公演情報のお問い合わせ先でご確認ください。

 

仁左衛門が語る「松竹大歌舞伎」西コース

 左から、安孫子正松竹株式会社代表取締役副社長、片岡仁左衛門、松本辰明(公社)全国公立文化施設協会専務理事

2020/02/19