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仁左衛門が文化勲章を受章
2025年10月17日(金)、令和7(2025)年度の文化勲章受章者が発表され、片岡仁左衛門がその一人に選ばれました。
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受け入れられる喜び
前年度までの文化功労者のなかから、文化の発達に関し特に優れた功績を納めた個人に授与される文化勲章。受章に際し、仁左衛門は、「正直驚きましたがうれしかったです。亡くなった父や母、兄弟たちにも報告しました」と、率直な喜びを表します。続けて、「落ち着いて自分自身を振り返ったときに、このような大きな勲章を私がいただいていいのかと思いました。ただ、好きでやらせていただいてきたことを通して大きな評価をいただけたことに、幸せを感じます。この勲章の大事さや質を落とさないように、これからなおいっそう精進し、多くのお客様に歌舞伎に親しんでいただけるよう努力しなければならないと思います」と、深謝の意を述べました。
これまでの長い芸能の道で、最もうれしかったことは、「今回文化勲章をいただけたことも、ひとつうれしいことです」と、笑顔を浮かべます。「やはり舞台を勤めていて、お客様に受け入れられているなと感じるときはうれしいです。役者はお客様に受け入れていただいて初めて幸せを感じることができます」と、思いを明かします。
役のゴールを目指し続ける
これまで勤めた役のなかで、特に印象深い役を問われると、「『女殺油地獄』の河内屋与兵衛です。私の出世作と言っていただいているひとつでして、ある意味スタート地点だと感じます。あとは、私自身華奢なのですが、線の太い役をさせていただいた『義賢最期』ですね」と、振り返りながら話します。また、これまで得た芸を後輩に継承していくうえで伝えたいことについて、「“役を掘り下げる”ことです。先輩がこう演じていたからその通り演じるというわけではなく、その先を考える大切さを伝えたいです。私自身もいまだに発見があり、なぜこれまで気が付かなかったのかということもたくさんあります。すぐにできたと思わずに、その上を目指していただきたい。せりふの通りではなく、その裏の気持ちをしっかり自分自身で掴まないといけないということを伝えています」と、後進への思いを寄せました。
役者人生において、大病を克服した経験について問われると、「1年ほど舞台に立てなかったことが本当に辛くて。改めて舞台に立てたときの喜びは大きかったです。復帰公演で多くのお客様があれだけ喜んでくださり、非常におこがましいですけれども、“私を待っていてくださったんだな”という喜びがありました。そして同時に責任感も感じました」と、感慨深げに、改めてお客様への感謝と受章の喜びを伝えました。
