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今年も「吉例顔見世興行」が南座で開幕

 12月5日(土)、南座「當る丑歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」が、初日を迎えました。

 例年、京都の冬の風物詩として11月末に幕を開ける「吉例顔見世興行」。今年は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、公演期間を短縮し、12月に入ってからの開幕となりました。入口では検温や消毒などの感染症対策が設けられ、客席には間隔がとられましたが、今年2月以来となる関西での大劇場での歌舞伎公演の開幕に、会場はお客様の拍手でいっぱいとなりました。

 

 第一部は、鷹之資の『操り三番叟』で始まります。まるで本物の人形であるかのような動きのなかに、迫力ある踊りも見せた鷹之資。そんな鷹之資の踊りを、後見の國矢が支えます。息の合った二人が、ときに客席を和ませながら、五穀豊穣、天下泰平を願うご祝儀の舞は、顔見世の幕開きにぴったりなひと幕となりました。

 

 続いて、近松門左衛門による『傾城反魂香』。口が不自由のため、自らの思いをうまく伝えられない又平を演じるのは鴈治郎。そんな又平をどんなときも支えるのが、扇雀演じるおとくです。近年では、ロシア公演(平成30年9月)でも同配役で好評を博した二人の芝居からは、夫婦の深い情愛があふれ出ます。又平の渾身の思いが奇跡を起こすと、客席も晴れやかな雰囲気に包まれました。

 

 第二部も、おめでたい舞踊の『寿二人猩々』から始まります。隼人、千之助が勤める中国の伝説の霊獣・猩々が、亀鶴勤める酒売りのところに毎晩訪れては、楽しそうに酒を飲み、踊り転げます。唐織の特別な衣裳に身を包んだ若い二人の舞踊は、テンポ良く変化に富み、最後は酒売りと三人で決まって、観ているお客様を引き込みました。

 

 続いては、時代物の名作『熊谷陣屋』。源平合戦の陰で、複雑な心情をにじませるのは、仁左衛門演じる熊谷次郎直実(7日から出演)。仁左衛門が登場すると、大きな拍手が沸き起こりました。初日は錦之助が熊谷、門之助が熊谷妻相模、隼人が源義経とそれぞれ代役を勤めました。我が子を犠牲にした直実と、妻相模が、主君を前に自らの思いに耐えもだえる姿は客席の涙を誘い、歌六演じる弥陀六が主君への恩義を見せました。自らの子を犠牲にした直実は、藤の方と敦盛を、弥陀六に託し去っていきます。「十六年は一昔…」直実のせりふが花道から響き幕切れとなりました(10日より孝太郎が相模に復帰、門之助が藤の方の代役として出演)。

 

 第三部は、名前の通りに縁起の良い舞踊、『末広がり』にて開幕です。米吉勤める女大名は、恋の思いを扇子に書いて伝えようと、尾上右近勤める太郎冠者に末広がりを買うように頼みますが、末広がりが何か知らない太郎冠者は、だまされて傘を買って帰ります。若手俳優二人が、おかしみもありながら、松羽目の舞台で格ある舞踊を披露し、客席からは大きな拍手が送られました。

 

 最後の演目は、男女の恋を描いた上方歌舞伎の代表作『吉田屋』。伊左衛門を幸四郎が、夕霧を壱太郎が勤めます。紙衣を着ながらも、実は大店の若旦那であった伊左衛門が、夕霧のほかの客に嫉妬する場面では、幸四郎が憎めない優男を演じてみせます。花魁としての誇りを保ちながらも、淡い女心を垣間見せる壱太郎。花形俳優による、美しく華やかなひと幕で、「吉例顔見世興行」の幕が閉じました。

 南座「當る丑歳 吉例顔見世興行」は12月5日(土)から12月19日(土)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中です。

 

2020/12/12