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仁左衛門が語る、歌舞伎座「二月大歌舞伎」、「三月大歌舞伎」

仁左衛門が語る、歌舞伎座「二月大歌舞伎」、「三月大歌舞伎」

 

 2月1日(火)に初日を迎える歌舞伎座「二月大歌舞伎」、3月3日(木)から始まる「三月大歌舞伎」に出演する片岡仁左衛門が、公演への思いを語りました。

一世一代で挑む「渡海屋・大物浦」

 「二月大歌舞伎」で一世一代と銘打たれた仁左衛門の『義経千本桜』「渡海屋・大物浦」。『女殺油地獄』、『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』に続いて、一世一代と銘打たれた公演は今回が3作目となります。平成16(2004)年4月の歌舞伎座公演で初めて勤めてから、これまで5回、渡海屋銀平実は新中納言知盛を勤めてきた仁左衛門は、「初演時はすでに教わる方もいらっしゃいませんでしたので、紀尾井町のおじさま(二世尾上松緑)と河内屋のおじさま(三世實川延若)を参考にさせていただき、自分なりの型をつくり上げたという意味でも、この狂言には大変愛着がわいています」と語ります。

 

 「回数をそれほど演じてはおりませんが、勤める気持ちや、それに打ち込むエネルギーの使い方が大切ではないかと思い、(一世一代と)謳わせていただきました。完成というのはないものですから、まだまだ勉強をいろいろとしていかなくてはいけない部分はあるのですが、お客様に対して恥ずかしくない舞台を」と、最後に挑む知盛への決意と覚悟をにじませます。「役者はどうしても、もういっぺんやってみよう、となりかねないですので(笑)。自分でブレーキをかけるためにも、皆様への公約でございます」と笑顔を見せました。

  

知盛の生き様を伝える

 仁左衛門は知盛を演じるにあたり、「安徳帝への忠義と源氏への恨み」を意識しているといい、「人物の生き様、戦いの虚しさ。そして忠義も場合によっては虚しさを伴うことがある。そういうことを訴えられれば」と、語ります。知盛が大碇を担いで入水する最後の場面は、「恨みも晴れ、安徳帝を確認したあと心静かに沈んで消えていく。一人の人間として、いろいろとがんじがらめになっていたものから解放されて、散り際、潔さを見せる...一つの武士の生き方」をお客様に観てもらいたいと強調します。

 

仁左衛門が語る、歌舞伎座「二月大歌舞伎」、「三月大歌舞伎」

 

  せりふを観客へストレートに伝える方法も、常に考えているという仁左衛門。役を演じるにあたり、「意味を伝えるだけではなく、思いを伝えるようにせりふを言うこと」を大切にしていると言います。「“おんてき”という言葉は、相手を尊ぶ“御敵”ではなく、怨む敵で“怨敵”。せりふで『怨敵九郎判官義経を討取って』と言いますが、お客様がその言葉を、“怨敵”ととらえてくださるか」と、神妙な面持ちで話します。「わからなくても雰囲気で汲み取っていただきたいところもありますが、できるだけお客様にわかる言葉で伝えたい。そういう部分はどんどん直している」と、明かしました。

七五調のせりふでみせる『河内山』

 「三月大歌舞伎」では河竹黙阿弥の代表作の一つ、『河内山』の河内山宗俊を勤めます。「これも好きな狂言です」と話す仁左衛門は、自身が演じる際には「必ず質見世の場をつける。せりふで説明はしていますが、やはり絵で見ていただかないと」と、演目立ての工夫を述べます。「『悪に強きは善にもと』というせりふを言いますけど、大悪人は部分的に大善人である場合もある。上州屋の娘がかわいそうで親たちを助けるために、河内山は命を張って(松江邸に)乗り込むわけですからね。いざとなったらお金を度外視しても、立ち向かおうとする人でなければいけない。悪であることを強く出す必要はないと思って演じています」と、役がもつ魅力について触れます。

 

 黙阿弥の七五調の名ぜりふが聞きどころでもある本作。「七五調のせりふは、気を付けないと本当に七五調で終わってしまう」と説明し、「お琴のリズムに乗って話してるだけではいけない。リズムを大切にし、運びを変えたり緩急を付けることで、お客様にご理解いただける部分が増えると思うので、大事にしています」と力を込めます。

 

 「役者はやはりお客様に観ていただいて、初めて役者としての価値があるもの」と公演に向けて熱い思いを語った 仁左衛門。「今の状況下、出づらい環境のなかでお芝居をやらせていただきますので、皆様のお力添えがなければかなわない。ぜひ観ていただきたい。それが私のメッセージでございます」。 

  歌舞伎座「二月大歌舞伎」は、2月1日(火)から25日(金)までの公演。歌舞伎座「三月大歌舞伎」は、3月3日(木)から28日(月)までの公演。「二月大歌舞伎」 はチケットWeb松竹チケットホン松竹で販売中、「三月大歌舞伎」2月14日(月)から発売予定です。

2022/01/31