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「平成中村座 十一月大歌舞伎」初日開幕
2022年11月3日(木・祝)、「平成中村座 十一月大歌舞伎」の初日が幕を開けました。
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浅草寺境内 本堂裏に設置された仮設劇場で公演を行っている平成中村座。先月の「平成中村座 十月大歌舞伎」公演では、4年ぶりとなる浅草での開催に多くの観客が集まり、街を大いに盛り上げました。活気あふれる熱そのままに、11月は異なった演目立てで、また平成中村座初となる新作歌舞伎『唐茄子屋』は配役を新たに上演します。
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第一部は、『寿曽我対面』で幕が開きます。橋之助勤める工藤左衛門祐経の館に招かれた、新悟勤める大磯の虎、虎之介勤める小林朝比奈と鶴松勤める化粧坂少将や諸大名たち。そこに親の仇討ちのため曽我兄弟がやってきます。福之助勤める血気盛んな五郎と、歌之助勤める冷静な十郎が、和事と荒事の対比を存分に表現します。勘九郎演じる鬼王新左衛門が紛失していた名刀友切丸を持参すると、兄弟を前に懐の大きさを見せる祐経。歌舞伎ならではの様式美にあふれる祝祭劇をお楽しみください。
続いては変化舞踊の一つ、『舞妓の花宴』です。満開の桜が咲き誇るなか、七之助勤める男装した白拍子和歌妙が、踊りながら水干や烏帽子などを順に取っていき、美しい振袖の娘へと姿を変えていくのが眼目です。四季の景色を思い浮かべながら恋心を踊るクドキや、団扇太鼓を手にした軽快な踊りなど、次々と変化を見せる舞に客席もすっかり引き込まれていきます。
第一部最後は『魚屋宗五郎』。最愛の妹お蔦の悲惨な最期を知った勘九郎勤める宗五郎は、禁酒の誓いを破り、酒を飲みほしてしまいます。扇雀勤める女房おはまが見守るなか、泥酔し千鳥足で花道を駆け出す見事な酔いっぷりに、場内からは笑いが漏れます。酔いが冷めぬなか、磯部の屋敷で妹の死を嘆き、悲痛な心情を切々と訴える宗五郎の思いが、先ほどの雰囲気とは一転、観るものの胸を打ちました。江戸の人々の喜怒哀楽を鮮やかに描いた、河竹黙阿弥による世話物の傑作です。
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第二部の幕開けは、今回の公演のために宮藤官九郎が書き下ろした新作歌舞伎『唐茄子屋~不思議国之若旦那』。吉原遊びが過ぎた勘九郎演じる若旦那徳三郎は、親に勘当され、七之助演じる馴染みの傾城桜坂にも見放されます。居候先の叔父から唐茄子(かぼちゃ)売りを命じられた徳三郎は、そこで貧しい母子に出会い…。古典落語「唐茄子屋政談」を題材としながら「不思議の国のアリス」の世界をない交ぜにした、ファンタジーと笑いの要素が詰まった物語に、客席も終始笑顔が広がりました。
浅草での平成中村座は『乗合船恵方萬歳』で締めくくります。波音で幕が開くと、そこは隅田川の渡し。三河万歳の扇雀演じる萬歳、勘九郎演じる才造をはじめ、白酒売、大工、若旦那、芸者、通人らが船に乗り込みます。七福神に見立てた多彩な登場人物たちが次々と舞や芸を見せ、賑やかな雰囲気のなか打ち出しとなりました。
「平成中村座 十一月大歌舞伎」は、27日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹で販売中です。