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勘九郎、七之助が語る、御園座「陽春花形歌舞伎」

勘九郎、七之助が語る、御園座「陽春花形歌舞伎」

 

 2023年4月1日(土)から始まる御園座「陽春花形歌舞伎」に出演の中村勘九郎、中村七之助が、公演に向けての思いを語りました。

 勘九郎と七之助の御園座出演は、平成24(2012)年の中村勘九郎襲名披露公演以来、実に11年ぶりのこと。平成30(2018)年に改修を終え新開場した御園座へは、今回が初お目見得です。昼の部『お染の七役』は七之助が7役、夜の部『怪談乳房榎』は勘九郎が3役を、いずれも早替りで勤めます。それぞれ自分たちにとって大切な演目だと話す勘九郎は、「御園座、そして名古屋のお客様に、歌舞伎を楽しんでいただける公演になると期待しています」と、笑顔を見せました。

 

7つの役の演じ分け

 『お染の七役』について七之助は、「玉三郎のおじ様(坂東玉三郎)から手取り足取り稽古をつけていただきました」と、11年前の初演時を振り返ります。役の演じ分けに関して、「よく言われたのはやはり形です。声で演じ分けるのではなく、例えばお染なら頭頂部からお水が垂れるような首の傾げ方、お光ならもう少しさばさばした歩き方や首の傾げ方。そのフォルムでお客様に分かってもらえるように、気を付けて演じたいですね」と、真摯な口調で述べました。

 

 今回、昼の部で鬼門の喜兵衛を、夜の部で磯貝浪江を勤める喜多村緑郎について、七之助は、「プライベートでは一緒に飲みに行く仲ですが、実はこのように(絡みの多い)お芝居をするのは初めて。息遣いや空気感を二人でつくり上げていくことが楽しみです」と、共演を喜びます。また、今回の早替りのために、御園座では仮設エレベーター装置が設置されることも明かされ、新開場後の御園座で初めて演じられる『お染の七役』に、ますます期待が高まります。

 

経験を重ねて自由に

 「『怪談乳房榎』は父(十八世中村勘三郎)が延若のおじ様(三世實川延若)から習って勤めた役。稽古をしていた父を迎えに行ったら、うれしそうに“面白いことを聞いたよ”と話してくれて…」と、懐かしむ勘九郎。自身も、国内やニューヨークで複数回勤めてきました。「これまでより、一つひとつの役をより濃く、鮮明に描けるのではないかと思います。直伝された早替りの技法の、そのアナログさが新しく見える素晴らしい作品ですので、そこを楽しんでいただきたいですね」。

 

 「父が演じると、正助がコミカルで可愛らしく、主人公のように見えます。僕はそうではなく、三次の暗い部分のような、自分の持ち味がある。若い時分は白いキャンバスのような、役になりきれる役者像を追い求めていましたが、歌舞伎はそれだけではダメで、お客様は役だけではなく役者も観にいらっしゃる。最近はそれが楽しくなってきました。経験を積み重ね、40代になって、これからどんどん自由に発信していけるのではないかなと思っています」と、晴れやかな表情で語ります。

 

勘九郎、七之助が語る、御園座「陽春花形歌舞伎」

 左より中村勘九郎、中村七之助

 

中村屋にゆかりある土地で

 勘九郎は改めて、「昼夜とも歌舞伎のエンタテインメント性を色濃くもつ作品です。『お染の七役』は衣裳や舞台装置も美しく、春にぴったり。『怪談乳房榎』は、本水を使った立廻りもあります。見た目のインパクトを楽しんでほしいですね」とアピール。七之助も、「『お染の七役』では、いろいろな姿を観ていただきたい。『怪談乳房榎』とはまた違った、とても古風な早替りを楽しんでいただけたらと思います」と、昼夜の早替りを見比べる面白さにも触れました。

 

 初代中村勘三郎の出身地としてゆかりのある名古屋、そして御園座で久々に舞台を勤めるうれしさを口々に語った二人。たくさん話し合って演目を選んだという今回の公演について、「初めての方にも観ていただいて損はない作品です。学割もありますので若い方にもぜひ観に来ていただきたい」と、自信をもって熱く呼びかけました。

 御園座「陽春花形歌舞伎」は、4月1日(土)から22日(土)までの公演。チケットはチケットWeb松竹御園座ほかで販売中です。

2023/03/03