ニュース
勘九郎、七之助が語る「明治座 十一月花形歌舞伎」
2024年11月2日(土)から始まる「明治座 十一月花形歌舞伎」に出演する中村勘九郎、中村七之助が、公演への思いと出演演目について語りました。
▼
4年半越しの公演
平成23(2011)年以来、バラエティ豊かな演目で人気を博してきた「明治座花形歌舞伎」。令和2(2020)年3月に予定されていた「明治座 三月花形歌舞伎」のコロナ禍による中止を経て、勘九郎、七之助が出演するのは平成28(2016)年以来、8年ぶりとなります。
勘九郎は「2020年、幕が開かないかもしれない状況のなかでも稽古を続けていたときが精神的にもとてもつらかったです。明治座に帰ってこられることを本当にうれしく思いますし、当時の悔しさをバネにこの4年半やってきたことを、おみせするいい機会と思っています」と、気合十分。七之助も「当時は半年近く舞台に出演できない、人生で初めての経験をして、職業を変えなくてはいけないかと本気で思ったほどでした。一歩一歩、皆様の力とともに進んで、この11月に明治座に戻ってこられることをありがたく思います」と、感謝を込めて続けました。
江戸の“匂い”を感じて
昼の部で上演される『一本刀土俵入』は、中村屋にとっても大切な作品です。「駒形茂兵衛は父(十八世中村勘三郎)からせりふ回しなどとても細かく教わりました。茂兵衛を演じる父に、稽古で睨まれると自分の役のせりふが出てこなくなったりするんです。祖父(十七世勘三郎)もそうでしたが、だんだんそういった味が出せる役者になれたらと思います。受けた恩を10年越しで返すという、人と人との温かさのある作品。令和の役者でも、作品に漂う江戸の“匂い”を感じていただけるよう、皆で力を合わせてやっていきたいです」と、抱負を述べます。
七之助は、演じるお蔦について「自暴自棄な部分もありつつ、根は良い素敵な方。仕事や生活をどうにもできない、自分と茂兵衛を重ねる部分もあるのではないでしょうか。自分を卑下する気持ちや、子供を守らなくてはならない、でもやくざものとの関わりも切れないという女性の苦しみがあり、複雑な部分がお客様に伝われば。言葉で説明をせず(場面転換で)10年が過ぎていても、お客様の心に響く展開として成立しているのが、長谷川伸さんの脚本の力であると感じます。その空間を心で埋めることが後半の風情になると思うので、お客様にも想像して、自由に感じていただけたらと思います」と、熱く語りました。
夜の部では勘九郎が『鎌倉三代記』、七之助が『お染の七役』に出演します。『鎌倉三代記』で佐々木高綱を演じる勘九郎は「義太夫狂言のなかでも特に面白く、高綱は‟かっこいい”を追求した役。時代物の大きさを出したいと思っています。徳川家を鎌倉時代に置き換えて上演するという、当時の幕府に対しての歌舞伎の反骨精神が凝縮された作品ですよね。義太夫さんとの掛け合い、 ノリ地の面白さもふんだんに入っていて、とても音楽的なせりふが多いので、楽しくセッションができたら」と、初役への期待がうかがえます。
役者人生が詰まった舞台を
七之助が『お染の七役』を勤めるのは今回で5回目。「玉三郎のおじ様に初めて教わったときのお稽古を思い出し、役の深さや魅力を体現できるよう、一つ一つ丁寧にやる。そのうえで、今までの僕の役者人生が詰まったものになればと思います。まず型をきちんとやれば、七役それぞれの心はおのずとついてくる。そこを心がけ、切り替えがぱっとできたら。歌舞伎の早替わりはただ早く出ていけば良いのではなく、身体でキャラクターチェンジができることが大切だと思っています。お化粧にも慣れ、以前よりは動じなくなりましたね」と、振り返りながら語ります。
それを受け、勘九郎は「若い頃は後家のお役などはとても難しかったと思いますが、この間見たときに、年齢を重ねてその幅ができて、一つ一つの役に対してどこをどうみせるか的確に掴めていると感じました。この5回目の『お染の七役』を僕もとても楽しみにしています」と、期待を込めました。
「念願の明治座では、2020年にお見せできなかった私たち、そして先輩方も若手も、皆さんで力を合わせてつくる、楽しい芝居をお届けできたらと思っております」と、勘九郎が締めくくると、「明治座の周りは芝居町の雰囲気が残る楽しい場所で、公園や老舗のお店、新しいカフェなどもあります。一日を通してこの明治座の舞台を楽しんでいただければと思っております」と、七之助も呼びかけました。
▼
「明治座 十一月花形歌舞伎」は11月2日(土)から26日(火)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹、チケットホン松竹ほか、明治座で発売中です。