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菊之助と丑之助が神田明神で「襲名披露お練り」

▲ 神田明神の鳥居からスタート
2025年3月31日(月)、東京 神田明神で、尾上菊五郎、尾上菊之助、尾上丑之助が、「襲名披露お練り」を行いました。
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お練りの出発前、神田明神の参道の鳥居から御神殿にかけて、およそ2,000人がひしめきあい、いまかいまかと待ち構えます。菊之助と丑之助が登場すると威勢のいいかけ声と拍手が巻き起こり、「古今稀なるお練りの始まりでございます!」という菊之助の挨拶と小気味よい拍子木の合図に合わせてお練りがスタート。桜の花びらが舞うなか、菊之助と丑之助だけでなく、纏や木遣り、お囃子やお神輿、芸者衆らも含めた約250人もの豪華な隊列が参道から隨神門へと練り歩き、曇り空を吹き飛ばすような華やかな雰囲気に包まれました。

境内では、尾上菊之丞の総合演出のもと、アドバイザーに小橋賢児を迎えた一日限りの特別なパフォーマンスが行われました。太鼓奏者の山部泰嗣の力強い太鼓が鳴り響くなか、特別出演のZeebraが登場。神田明神の御祭神である平将門に扮したZeebraが歴代の菊五郎を紹介、御神殿に当代の菊五郎が登場すると、境内に歓声があふれました。「東西 Everyone!」と始まった襲名披露を寿ぐラップのなかを、菊五郎に向かってまっすぐ、踏みしめるように歩んだ菊之助と丑之助。二人が御神殿に到着し、音羽屋が三代そろうと、ひときわ大きなかけ声や拍手が巻き起こりました。

▲ 菊五郎とともに、音羽屋三代がご挨拶
挨拶に立った菊五郎は、お集りのすべての皆さんへのお礼とともに、「末永く両人をご贔屓お引き立て、ご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします」と声を張りました。菊之助も、熱い感謝の言葉も口にしながら、「攻め続ける歌舞伎の精神、傾く精神を忘れず、先人たちの教えを守り、力強く八代目菊五郎、六代目菊之助として進んで参ります」と志を述べます。丑之助は「祖父と父が名のっておりました菊之助の名跡を六代目として襲名いたすことになりました。本日のお練りで菊之助になる決心が固まった気がします」と、凛々しく挨拶しました。
御神殿内での成功祈願ののち、菊之助と丑之助が奉納舞踊の『七福神』を素踊りで披露。厳かな空気のなか御神殿の前で舞う、二人の息の合ったみごとな舞に、お集りの皆様もすっかり目を奪われ、拍手が鳴りやみませんでした。こうして、古今が融合する“かつてないお練り”が締めくくられました。

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追って行われた取材の場で、菊之助は「今日は神前で襲名の奉告をさせていただき、心の準備を整えることができました。たくさんの方がおいでくださいまして、八代目、六代目と声をかけてくださいましたのが、本当に励みになりました」と、心からの思いを口にしました。ラップを用いた演出については「伝統と現代のラップという意味のある掛け合わせをお客様に楽しんでいただくことができ良かったです」と笑顔を見せ、「御神殿で待つ父に向かい、二人で歩いて行くときには気持ちが引き締まりましたし、これから自分が八代目菊五郎という名跡を継ぐという実感が、その1歩1歩に湧いてまいりました」と、感無量といった様子で話しました。
「緊張しましたが、神殿の前で踊らせていただいて、神様にも喜んでもらえたと思います。Zeebraさんのラップのなかを歩くことで、勇気がもてました。迫力があってすごかったです」と、素直な感想を伝えた丑之助。「父と祖父がここまで大きくしてくれた菊之助という名跡を、私もどんどんいろいろなことに挑戦して大きくしていきたいと思います。今回の(襲名の)演目は、道成寺や梅王丸など、数々の大役がありますが、子どもだからといってその役を崩さないよう、ちゃんとお稽古をして、役に入りきることを目標にしています」と、頼もしく述べました。
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八代目尾上菊五郎、六代目尾上菊之助襲名披露興行は、歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」、「六月大歌舞伎」から始まります。その後、7月の大阪松竹座「七月大歌舞伎」、10月御園座「吉例顔見世」、12月南座「吉例顔見世興行」、さらに2026年6月博多座「六月博多座大歌舞伎」と続く予定です。