歌舞伎いろは

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博多座 「二月博多座大歌舞伎」  『封印切』 翫雀さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村翫雀

大好きな博多のこと、そして父子のこと

 ──博多座には平成22(2010)年6月以来のご出演ですね。

 博多は住みたいくらい大好きな街なので、うれしくて仕方がありません。昼が『封印切』、夜が弟の扇雀の『土屋主税(つちやちから)』と、「玩辞楼十二曲」の芝居が昼と夜に2本も上演されるのは、久しぶりです。ありがたいことです。

 ──お父様の坂田藤十郎さん、ご長男の壱太郎さん、翫雀さん。三世代が歌舞伎俳優として活躍されています。それぞれの親子関係はいかがですか。

 壱太郎は女方を勤めることが多いので、僕が教えることよりも、ほかの先輩に教えていただくことのほうが多いですね。教えるにしても、一から手取り足取りではなく、ある程度自分でつくらせ、それに駄目を出します。父もそうでした。僕は父に忠兵衛も治兵衛も教わっていません。父も駄目は出してくれます。

 ──舞台を離れたところでのご関係はいかがでしょう。

 僕は父と子どもの頃に遊んだり、喋ったりした記憶はほとんどありません。将棋をちょっとはしたかなあ。父はキャッチボールひとつする人ではなかったし、舞台が忙しくて自宅にもあまりいませんでした。それが、僕が大学生の頃でしたか、いきなり地方巡業で二人きりになりました。父は母(扇千景)に、どこかへ僕を連れて行ってやってと言われたんでしょう。食事に行きました。二人で何を話していいのか困りましたね。

 今のほうが子どもの頃より、ずっと父とよく話します。むしろ世間一般の親子より会話が多いかもしれません。仕事が同じで、しょっちゅう一緒ですし、芝居のことなど話題も多い。当然ながら芝居に関して「ここをこうしましょう」と提案することもあります。僕は壱太郎が子どもの頃、よく遊びましたよ。テレビゲームなんて僕のほうが必死になっていました。

 ──たとえば、『曽根崎心中』では、お二人とも翫雀さんの徳兵衛でお初を勤めていらっしゃいます。相手役としてはいかがですか。

 父は相手役として認めないと、自分の子だからと使ってくれる人ではありません。父のお初はかわいいです。役になり切る人なので、やりやすい。目を見て芝居をしてくれます。

 壱太郎も相手役をしていると目を見てきますよ。こちらが何も言わなくても自然とそうなります。でも、最後に一つ。壱太郎のことを褒められてもうれしくありません。「僕はどうなの?」と聞きたくなりますから! これ、書いておいてくださいね(大笑)。

中村翫雀 成駒屋!

中村翫雀さんをもっと知りたい!

五代目 中村翫雀(なかむら かんじゃく)

生まれ 昭和34年2月6日、京都府生まれ。
家族 坂田藤十郎の長男。息子は中村壱太郎。弟は中村扇雀、中村虎之介は甥に当たる。
初舞台 昭和42年11月歌舞伎座『紅梅曾我』一萬丸、『心中天網島』娘お末で、中村智太郎を名のり初舞台。
襲名 平成7年1月中座『封印切』亀屋忠兵衛、『春興鏡獅子』小姓弥生後に獅子の精ほかで、五代目中村翫雀を襲名。
受賞 平成18年度日本藝術院賞。同23年松尾芸能賞優秀賞ほか受賞多数。

平成25年

  • 2月 「二月花形歌舞伎」(大阪松竹座) 『GOEMON 石川五右衛門』豊臣秀吉
  • 3月 「通し狂言『隅田川花御所染―女清玄―』」(国立劇場) 『隅田川花御所染』轟念阿闍梨/僧桜ン坊/粟津六郎俊兼
  • 4月 「柿葺落四月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『盛綱陣屋』伊吹藤太
  • 5月 「柿葺落五月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『鶴亀』鶴
  • 6月 「柿葺落六月大歌舞伎」(歌舞伎座) 『土蜘』番卒太郎
  • 7月 「七月大歌舞伎」(大阪松竹座) 通し狂言『柳影澤螢火』徳川綱吉/『曽我物語』曽我十郎/『杜若艶色紫』佐野次郎左衛門
  • 9月 「九月大歌舞伎」(新橋演舞場) 『元禄忠臣蔵』「御浜御殿綱豊卿」富森助右衛門/『天衣紛上野初花』松江出雲守/『不知火検校』指物師房五郎/『馬盗人』ならず者悪太
  • 10月 「十月花形歌舞伎」(大阪松竹座) 新・油地獄『大坂純情伝』果心/通し狂言『夏祭浪花鑑』釣船三婦
  • 11月 「通し狂言『伊賀越道中双六』」(国立劇場) 『伊賀越道中双六』誉田大内記/雲助平作
  • 12月 「當る午歳 吉例顔見世興行」(京都四條南座) 『仮名手本忠臣蔵』「道行旅路の嫁入」奴可内/『道行雪故郷』亀屋忠兵衛

平成26年

  • 1月 「壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座) 『乗合船惠方萬歳』通人/『東慶寺花だより』惣右衛門

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