歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



大阪松竹座 「七月大歌舞伎」  『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」 仁左衛門さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 片岡仁左衛門

1年ぶりに大阪の舞台へ

 ――昨年10月の歌舞伎座公演を最後に、今年6月の歌舞伎座公演まで7カ月舞台を休まれていました。右肩腱板断裂で手術をされたとうかがいました。

 昨年11月に手術をして2カ月ほど入院し、その後はリハビリと家でいろいろな整理をしておりました。書斎の整理やたくさんある大工道具の片付けをしましてね。あとはCS放送の衛星劇場で、いろいろな方のお芝居を拝見し、勉強させていただきました。

 肩の痛みは7、8年前からありました。10人以上の先生に見ていただき、いろんな治療をいたしました。温めろと言う先生、冷やせと言う先生、動かせと言う先生、動かすなと言う先生。いろいろいらっしゃいました。特に痛みがひどくなったのが、昨年正月頃からです。注射を打ってごまかしていたのですが、ひと月痛みを抑えられたのが、やがて1週間に2度打たなければならなくなり…。そういう状態が長く続きました。

 ――ずいぶんお辛かったこととお察しします。

 昨年6月の『曽我対面』の工藤のときは、懐手を5分していられないくらいでした。手術をすると、半年は休まなくてはならないので、何とかしないで済む方法はないかとご相談していたのですが、もう無理だということになりまして…。手術をしてくださった先生が、「こんなにひどいのは見たことがない。ただれきって金魚の鱗みたいになっている」とおっしゃいました。そこまで酷使していたのです。

 ――そうして『お祭り』で舞台に復帰され、1年ぶりとなる大阪で松王丸、もうひと役が『身替座禅』の山蔭右京です。

 世界のどこへ持っていっても、ご理解いただける踊りです。踊りがわからない、というお客様にも必ず楽しんでいただけます。気をつけなければならないのは品格です。町人が浮気をする訳ではないので、上品さを大事にいたします。

 お恥ずかしいことですが、初演の頃は、お客様に受けたい、という気持ちが勝っておりました。今はそんなことは一切いたしません。そのときの右京の心理を描写しているだけです。花子のもとから帰宅しての踊りでは、2人の逢瀬のほのぼのとした雰囲気を再現できればと思います。ご婦人方にしたら、右京というのは、きっと許せないような浮気者でしょう。そのお芝居をご婦人方が喜んでご覧になるのも、面白い現象ですよね。

片岡仁左衛門 松嶋屋!

片岡仁左衛門さんをもっと知りたい!

十五代目 片岡仁左衛門(かたおか にざえもん)

生まれ 昭和19年3月14日、大阪府生まれ。
家族 父は十三代目片岡仁左衛門。五代目片岡我當、二代目片岡秀太郎が兄、息子は初代片岡孝太郎。初代片岡千之助は孫に当たる。
初舞台 昭和24年9月大阪 中座『夏祭浪花鑑』市松で本名の片岡孝夫で初舞台。
襲名 平成10年1・2月歌舞伎座『吉田屋』伊左衛門、『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』助六ほかで十五代目片岡仁左衛門を襲名。
受賞 昭和61年度芸術祭賞、62年度日本藝術院賞。平成11年毎日芸術賞と大阪舞台芸術賞、15年朝日舞台芸術賞。18年紫綬褒章、日本藝術院会員ほか受賞、受章多数。

平成25年

7月 七月花形歌舞伎」(大阪松竹座)
『保名』安倍保名/『一條大蔵譚』一條大蔵長成
8月 坂東竹三郎の会」(国立文楽劇場 自主公演)
『東海道四谷怪談』民谷伊右衛門
10月 十月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『義経千本桜』「木の実 小金吾討死」いがみの権太/「すし屋」いがみの権太

平成26年

6月 六月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『お祭り』鳶頭松吉

ようこそ歌舞伎へ

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