――2008（平成20）年に始まった「赤坂大歌舞伎」も4回目を迎えます。

　お客様が本当に温かいんです。街ぐるみで応援してくださいます。表を歩いていると、あちこちから「歌舞伎を見に行きますよ」と声をかけられるし、ポスターをお店に貼ってくださる。こういう現代的な街で、すぐ近くにはライブハウスもあるのに、下町の雰囲気があるのが珍しい。そこが赤坂の魅力ではないでしょうか。やりがいがあります。

　赤坂ACTシアターは、ミュージカルも劇団☆新感線のお芝居も上演される劇場なので、「次の月は歌舞伎なんだ、どんなだろう」と思った、普段は歌舞伎をご覧にならないお客様にもご来場いただきたいです。

　――街の魅力が俳優さんたちを支えているようですね。

　それとスタッフがいいんです。皆で一緒につくっていく姿勢がある。そこが父も大好きで、だから続いたんだと思います。父はそうではないと魂の動かない人で、情熱に情熱で返す人でしたから。父がいなくなった後も公演を続けていただけたのはうれしいですし、僕たち兄弟で今後も残していかなければいけないと思います。

　今回が過去3回と違うのは、2演目とも古典だということです。「歌舞伎ってこういう感じもあるんだ」と見てくださると、演目のバリエーションも増えると思います。今は兄弟を中心にやらせていただいていますが、いろんな俳優さんが出られるようになったら、なお「赤坂大歌舞伎」が盛り上がると思いますし、新作もできると思います。復活物でもいいですし、いつか赤坂ACTシアターならではの歌舞伎を上演したいですね。

　――今後なさりたいお役などあればお教えください。

　『桜姫東文章』の桜姫をもう一度やりたいですね（2009年7月シアターコクーン初演）。ほかにもたくさんあります。『籠釣瓶（かごつるべ）』の八ツ橋、『刺青奇遇（いれずみちょうはん）』のお仲、立役だと、もう一度『絵本太功記』「十段目」の十次郎をやりたいです（平成24年1月第36回俳優祭）。『菊畑（鬼一法眼三略巻）』の虎蔵も演じたいし…、やっていないやりたいものが、まだまだたくさんあります。

　――では、歌舞伎以外でなさりたい役はおありですか？

　ありません。ものすごく歌がうまかったら、『エリザベート』のトートとか、『オペラ座の怪人』のクリスティーヌとかやれたら面白いだろうと思いますが、100％ありません。僕は全然歌えませんから！