歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



歌舞伎座「秀山祭九月大歌舞伎」『太刀盗人』
又五郎さんのこと、お教えします

ようこそ歌舞伎へ 中村又五郎

これから先もきっと思い出として残るあの舞台

 ――過去5回の『太刀盗人』で特に印象に残られた公演はおありでしょうか。

 博多座での又五郎襲名披露興行(平成24年6月)で、(坂東)三津五郎さんの万兵衛で九郎兵衛を演じたことです。昨年の10月の名古屋で錦之助君と演じている間にも、三津五郎さんとの舞台の思い出がよみがえってまいりました。そんな経験は初めてでした。

 年齢は一緒で、早生まれなので彼が一学年上。子どもの頃から親しく、寿ちゃんと、私はずっと本名で呼んでいましたが、病気でしばらく休んでいらした彼が復活した『壽靱猿(ことぶきうつぼざる)』(平成26年4月歌舞伎座)で、私は女大名で共演しました。花道から登場する彼を舞台から、「元気になってよかったな」という思いで見つめていたことを思い出します。内容がどうこうというよりも、博多座で一緒に踊らせてもらったことが、これから先もずっと思い出になるのでしょうね。

今日よりも明日、明日よりも明後日

 ――歌昇さんに2月にご長男が誕生されました。

 まだ5カ月ちょっとで、やっと首が据わり、安心して抱っこできるようになりました。人の顔を認識するようになったので、僕が抱くと「誰だこいつは」という目をするんですよ。「そんな顔するなよ」って思います。いやあ、孫があんなに可愛いものとは思いませんでした。自分でも驚きました。

 ――ゆくゆく一緒になさりたいお役などあれば教えてください。

 とりあえず、『鳥羽絵』はやろうかなと(笑)。ですが、歌昇と種之助のときもそうでしたが、歌舞伎俳優になるのが嫌と言われたらそれまでです。ただ、当人が俳優をやりたいと思ったときに必要なお稽古ごとなどは、親が飴玉やおもちゃで吊ってでも連れていくべきかなと思うんです。それで「やりたくない」と言うのだったらしようがありません。私は嫌になったことが一度もありませんでした。

 ――又五郎さんは舞踊の名手です。以前に「踊りを楽しいと思ったことはないけれど、踊りは好き」とおっしゃっていました。

 「好き」と、勢いで言っちゃったのかもしれませんが、踊りに限らず、少しずつでも進歩し、今日よりも明日、明日よりも明後日と、回数を重ねるごとによくなりたいと思います。

中村又五郎 播磨屋!

中村又五郎さんをもっと知りたい!

中村又五郎(なかむら またごろう)

生まれ 昭和31年4月26日、東京生まれ。
家族 四代目中村歌六の二男。祖父は三代目中村時蔵、兄は中村歌六。息子は中村歌昇、中村種之助。中村時蔵、中村錦之助、中村獅童はいとこにあたる。
初舞台 昭和39年7月歌舞伎座 三代目・四代目中村時蔵追善七月特別興行で『偲草姿錦絵』「八段目道行」奴関助、『宮島だんまり』浅野光之丞ほかで中村光輝を名のり初舞台。
襲名 昭和56年6月歌舞伎座 三代目中村時蔵二十三回忌追善六月大歌舞伎で『船弁慶』静御前・新中納言平知盛の霊ほかで三代目中村歌昇を襲名。平成23年9月新橋演舞場『菅原伝授手習鑑』「寺子屋」武部源蔵、「車引」梅王丸、『沓手鳥孤城落月』豊臣秀頼ほかで三代目中村又五郎を襲名。
受賞 平成24年芸術選奨文部科学大臣賞、同26年紫綬褒章、ほか多数。
この一年の舞台

平成27年

9月 「秀山祭九月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『競伊勢物語』銅羅の鐃八/『伽羅先代萩』絹川谷蔵
10月 「錦秋名古屋 顔見世」(日本特殊陶業市民会館)
『松浦の太鼓』大高源吾/『俊寛』瀬尾太郎兼康/『太刀盗人』すっぱの九郎兵衛/『浮世柄比翼稲妻』不破伴左衛門
11月 「平成27年11月歌舞伎公演」(国立劇場)
『神霊矢口渡』南瀬六郎宗澄

平成28年

1月 「壽初春大歌舞伎」(歌舞伎座)
『梶原平三誉石切』大庭三郎景親
2月 「二月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『新書太閤記』柴田勝家/『籠釣瓶花街酔醒』下男治六
3月 「三月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『鎌倉三代記』富田六郎
4月 「四月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『身替座禅』太郎冠者/『幻想神空海』白龍
5月 「團菊祭五月大歌舞伎」(歌舞伎座)
『鵺退治』猪の早太/『楼門五三桐』右忠太/『勢獅子音羽花籠』鳶頭

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