歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



TBS赤坂ACTシアター「赤坂大歌舞伎」『夢幻恋双紙 ~赤目の転生~』
知っているともっと面白くなる!

ようこそ歌舞伎へ 中村勘九郎

何度観ても新しい発見のある作品

 ――蓬莱竜太さんには勘九郎さんが歌舞伎脚本を依頼されたとうかがいました。

 蓬莱さんの作品は以前から好きでした。最近は夫婦や親子など家族を題材にされることも多く、男性なのに女性を書くことに長けていらっしゃる。ぜひ、歌舞伎作品を書いていただきたいと1年前にお願いしました。

 ――内容の注文を出されたのでしょうか。

 歌舞伎の枠にとらわれずに書いてくださいと申しました。蓬莱さんは家族物が素敵なので、長屋を一つのテーマにして描くのはどうだろう、というお話はしました。ですが、長屋は登場しますが、長屋らしい会話はあまりありません。江戸の話ではありますが、細かな設定はないので、どこの時代に持っていっても大丈夫な作品になっています。

 ――演じるうえでの蓬莱作品はいかがですか。

 蓬莱さんの作品は一つのせりふにいろいろな意味が込められています。日常生活でも、我々は一つの言葉にいろんな感情を乗せて会話をしています。それと同じです。そこを大切に見つけていきたいです。台本には説明せりふが一切ありませんから、しっかりお客様に伝わるように、皆で細かくチェックをしています。蓬莱さんとご相談し、せりふを書き換えることもあります。

 せりふに含みがあるので、何度ご覧いただいても、ここがつながっていたのかと新たな発見がある作品です。あのせりふがあったから、こういうことになっているのかと気付かれることが多いはずです。

TBS赤坂ACTシアター「赤坂大歌舞伎」

平成29年4月6日(木)~25日(火)

『夢幻恋双紙 ~赤目の転生~

太郎 中村  勘九郎
中村  七之助
剛太 市川  猿 弥
中村  鶴 松
末吉 中村  いてう
源乃助 中村  亀 鶴
善次郎 片岡  亀 蔵

どれだけ掘り下げられるかが勝負

 ――蓬莱さんの演出はいかがでしょう。

 俳優に自由に演じさせてから、演出されます。俳優からアイディアを出すことも、蓬莱さんから提案されることもあります。蓬莱さんが「そっちのほうが面白い」と、こちらの意見がとり入れてくださることもあります。どんどん変わっていきます。

 蓬莱さんは「どれだけ掘り下げられるかが勝負になる作品です」とおっしゃいました。俳優それぞれが役に向き合っています。登場人物も少ないですし、全員がよくないと成り立たない芝居なので、皆が稽古場で悩んだり、提案したりしております。

 ――何歳から何歳までを演じられるのですか。

 「こう見えても12歳で」というせりふがあります。そこから22歳までです。

 ――音楽はどうなりますか。

 下座やツケをどのぐらい使うか検討中です。洋楽器も入りますが、浄瑠璃は入りません。

 ――どんな舞台装置になるのでしょうか。

 美術は松井るみさん。蓬莱さんが出されたテーマが切り絵なので、火事や雨のシーンも切り絵で、ポップで古風なものに仕上がるのではと思います。

ようこそ歌舞伎へ

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