――2月の歌舞伎座で長男が勘太郎、二男が長三郎を名のり、初舞台を踏まれました。今のお二人のご様子はいかがですか。

　4月に長男が小学校に上がり、二男は幼稚園に入ります。舞台は、本当によい経験をさせていただきましたが、もうしばらくはいいですねえ。僕はこの「赤坂大歌舞伎」のあと、5月が大阪松竹座で「花形歌舞伎」、6月が「名古屋平成中村座」と続きます。自分のことで精いっぱいで、なかなか子どものことまで考える余裕はありません。

　――お二人がこの『夢幻恋双紙』をご覧になられたら、また舞台に出たいとおっしゃるのではないですか。

　恥ずかしながら子どもたちは、僕のことを大好きなので、この作品は嫌いかもしれません。太郎は最初はいじめられていますし、転生してからは偉そうになり、殺されもします。子どもたちは、僕が殺される役を演じるのは嫌いです。だからきっと不評なのではないかと思います。

　――お子さんたちは勘九郎さんのどんな作品がお好きなのでしょう。『髪結新三』の新三も殺されるからいけませんか。

　新三は大丈夫のようです。兄弟で芝居ごっこを家で毎日のようにして遊んでいますが、下の子が肌を脱ぐと勘太郎が、「肌を脱いだら殺されちゃうよ」と言うんですね。新三が弥太五郎源七と立廻りをするときに肌を脱ぐでしょう。それが固定観念になっているんですよね。

　子どもたちはヒーロー物が大好きです。歌舞伎ではありませんが、『真田十勇士』の猿飛佐助は気に入っていました。シネマ歌舞伎にもなった『日本振袖始』の素盞嗚尊（スサノオ）も、大蛇と戦うので大好きです。でも、『四谷怪談』は怖くて見られませんでした。『三人吉三』の和尚吉三は刀を持って立廻りするので好きなようです。殺すほうを演じるのは平気なようですね。