歌舞伎文様考
新しいデザインを受け入れる歌舞伎衣裳の懐の広さ
野田版歌舞伎に参加する時、ひびのさんには新しい衣裳を創り上げるとともに伝統の衣裳を“野田歌舞伎らしく”取り入れる仕事も求められます。古からの伝統を汲む文様と新しい文様を共存させる挑戦の中から、歌舞伎の本質が見えてきます…
伊藤 「『野田版 研辰の討たれ』で主人公の纏う迷彩柄にはインパクトがありましたね。歌舞伎衣裳を手がけながら、新しい文様を作っていきたいと思っていますか?」
ひびの 「ぜひ挑戦してみたい、やってみたいです。ただ自分の中でなかなかタイミングとひらめきが一致する機会が少ないのですが」
伊藤 「歌舞伎には古から伝わる伝統的な文様も多くありますが、縞や格子といった江戸の最先端の文様もありますし、まさにアヴァンギャルドな文様に溢れていますよね」
ひびの 「例えば俳優さんの紋を首から肩の部分に大きく配置したデザインや、『助六由縁江戸桜』に登場する揚巻の大胆な帯はいつ観てもカッコいいと思いますし、ああいう衣裳を作ってみたいと思います。やりたいことがたくさんあるのですが、勉強することもその倍以上あるので…時間をかけて挑戦していきたいと思っています」
伊藤 「新しい文様を作り出していく一方で、大勢の俳優が登場する歌舞伎の舞台では従来からある衣裳を組み合わせていくのも大きな仕事ですよね。まさに『研辰の討たれ』は新作と従来の衣裳が絶妙なバランスで混在していましたが」
ひびの 「歌舞伎衣裳にはそれこそ色や柄、素材の膨大なストックがあるので組み合わせていくのはとても楽しいです」
伊藤 「データベースを組み合わせるから、そこから新しいものが生まれる楽しさがあるんでしょうね」
ひびの 「新しく作る衣裳にもそのデータベースは活かされています。例えば『野田版 愛陀姫』で中村勘三郎さんが着た濃姫の衣裳は新しく誂えたのですが、着物に散りばめた蝶々の意匠は伝統的なデザインにあるものです。愛陀姫役の七之助さんの衣裳の柄もそうです。伝統の柄を再構築して新しい印象が生まれる時まさに、歌舞伎衣裳の懐の深さを感じます」



ひびのさんが描いた、研辰の衣裳デザイン画

ひびのさんが描いた、濃姫の衣裳デザイン画の蝶
歌舞伎文様考
バックナンバー
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数千年前に生まれ、大陸を通って日本にもたらされた唐草が、歌舞伎と出会ってどのように開花したのか。衣裳や大道具の中に悠久の時間が紡ぎ出すロマンを見つけます。
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日本人は、文様にうつろう四季のダイナミズムや自然と暮らす人間のドラマをも盛り込みました。今回は歌舞伎の衣裳を見ながら、文様に隠された発見をご紹介します。
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武家屋敷や御殿にはたくさんの文様が散りばめられています。様々な文様は俳優と道具方の密な関係によって歌舞伎が創られてきたことを物語ります。
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歌舞伎を、そして劇場を文様で読み解く新趣向の知的探訪。本日は東銀座の歌舞伎座を訪れました。
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