映画館で気軽に歌舞伎をお楽しみいただける「シネマ歌舞伎」。“高性能カメラで撮影した歌舞伎の舞台公演を、美しい映像とこだわり抜いた音響で堪能する新しい観劇体験”である「シネマ歌舞伎」では、歌舞伎と映像制作の技術を積み重ねてきた松竹ならではの映像作品を生み出してきました(「シネマ歌舞伎」~初めての鑑賞ガイド~はこちら)。そのなかから、毎月厳選された作品を上映する《月イチ歌舞伎》では、過去の名舞台や話題作を取りそろえ、大スクリーンで臨場感ある舞台が楽しめる、多彩なプログラムを用意しています。
《月イチ歌舞伎》2024の冒頭を飾るのは、令和5年(2023)年に新橋演舞場で上演された新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐(つきのつるぎえにしのきりのは)』。人気ゲーム「刀剣乱舞ONLINE」の歌舞伎化作品として昨年上演され話題をさらった舞台が 、早くもシネマ歌舞伎最新作として上映されます。今回は、その内容をひも解くとともに、《月イチ歌舞伎》2024の上映ラインナップをご案内。ぜひ、この1年のお楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。
歴史の改変をもくろむ時間遡行軍を倒すため、審神者(さにわ)と呼ばれるプレイヤーが、刀剣の付喪神(つくもがみ)である刀剣男士を成長させ、歴史を守る戦いに挑む「刀剣乱舞ONLINE」は、刀剣ブームを巻き起こした人気作です。そして、ゲームの世界観をそのままに、アニメ、演劇、映画とさまざまな分野とのメディアミックスでも注目を集め、今や日本が誇るコンテンツの一つとなっています。
その「刀剣乱舞」が新作歌舞伎として、令和5年7月東京・新橋演舞場で上演され、大きな反響を呼びました。2役の演じ分けや、義太夫を用いた場面に、箏を使った魅力あふれる劇中音楽…古典歌舞伎をもとにしながらも、ゲームの臨場感を呼び起こす斬新な演出の数々など、どの場面も見逃せません。今回、「歌舞伎」を初めて観る方や、「刀剣乱舞」を初めて知った方にも、シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』をよりお楽しみいただくために、「歌舞伎」と「刀剣乱舞」の世界観が入り混じる、作品のみどころをご紹介します。
あらすじ
時は西暦2205年。室町時代後期の歴史を改変するために時間遡行軍が出撃した報告を受け、審神者は三日月宗近(みかづきむねちか)、小烏丸(こがらすまる)、髭切(ひげきり)、膝丸(ひざまる)、同田貫正国(どうだぬきまさくに)、小狐丸(こぎつねまる)の六振りを呼び出し、永禄年間(1558~1570)に向かわせる。しかし三日月宗近は、逡巡する様子を見せる。実は時の将軍足利義輝は、三日月宗近の最初の主であったとも、その愛刀であったとも伝わるためである。
やがて永禄の世に顕現した刀剣男士たちは、足利義輝や紅梅姫、執権の松永弾正、久直親子たちと交錯しながら、歴史を守るための戦いに身を投じていく…。
その1:まるで「白浪五人男」の勢揃い
刀剣男士たちが登場する場面では、歌舞伎の大人気演目『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』「稲瀬川勢揃いの場」を思わせる演出が見られます。「白浪」(盗賊)の五人がずらりと並び、それぞれの個性を表現した音楽に乗せて出自を話し、名のって美しく見得をする、歌舞伎屈指の人気を誇る名場面です。
本作での刀剣男士たちの初登場シーンでも、原案であるオンラインゲーム内でお馴染みのテーマソング(近侍曲)をアレンジした楽曲が流れ、それぞれのルーツと名前を紹介して見せます。「歌舞伎」ファンも「刀剣乱舞」ファンも、どちらも心湧きたつような場面にご注目ください。
その2:温厚な兄と、血気盛んな弟
歌舞伎には、鎌倉時代に曽我十郎、五郎の兄弟が、父親の仇である工藤祐経を討ったという史実を題材とした演目がいくつもあり、それらをまとめて「曽我物」と呼びます。「曽我物」では、兄・十郎は温和で物腰が柔らかく、弟・五郎は血気盛んで荒々しい役どころとして描かれます。本作『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』にも兄弟剣である髭切、膝丸が登場します。怒りを抑えきれず、思わず敵に飛びかかろうとする弟・膝丸を、兄・髭切が柔らかく静止します。その姿は、まるで曽我兄弟のようです。
実は、新橋演舞場公演時には、場内に曽我兄弟の衣裳が展示され、初めて歌舞伎をご覧になったお客様にも、古典の演目に興味をもっていただくきっかけとなりました。
その3:「松永弾正」を、新たな視点で描く
本作に登場する松永弾正は、歌舞伎の古典演目では悪役として有名な人物です。『祇園祭礼信仰記(ぎおんさいれいしんこうき)金閣寺』には松永大膳という名で登場し、将軍の母親を人質に天下を狙う、大悪人として描かれます。
本作での松永弾正は、「歴史改変を企む時間遡行軍」vs「歴史を守るために戦う刀剣男士」という「刀剣乱舞」全体のストーリーにおいて、歴史の分岐点に立つ非常に重要な人物として登場します。将軍足利義輝に忠義を尽くす、武士の鑑のような人物ですが、主君の傍若無人な暴君ぶりを見かねて、ある決断をします。演じたのは、中村梅玉。松永弾正は悪役か、それとも…。ぜひ本編を見てお確かめください!
その4:歌舞伎に登場する刀剣たち!
本作に登場する刀剣男士の一部は、実際に歌舞伎の古典演目に登場する刀剣の付喪神たちです。小狐丸は『小鍛冶』、小烏丸は『紅葉狩』、膝丸は『土蜘』、髭切は『寿曽我対面』や『助六』など、歌舞伎の有名な演目に登場する、歌舞伎に縁の深い刀剣が選ばれました。
『刀と歌舞伎』についての記事はこちら
三日月宗近と足利義輝の絆。
刀剣男士と主の切ない思いの行き違いは、圧巻のクライマックスへ!
単なる武器ではなく、その美しさや強度から神秘的な力をもつものとして、時を超えて愛される刀剣たち。大事にされた刀剣の付喪神である刀剣男士にとって、それぞれの持ち主への思い入れは深いに違いありません。
本作に登場する刀剣男士たちの一人である三日月宗近は、一説によると室町時代、足利義輝に所有されていたと言われます。義輝は将軍でありながら剣の達人でもあり、刀剣の蒐集家としても有名でした。三日月宗近を所有していたのが事実であれば、特別な扱いをしていたことでしょう。物語は、時代をさかのぼり歴史を意のままに変えようと企む時間遡行軍が、本来暗殺されるはずの義輝を生きながらえさせようとすることから始まります。歴史を守るために生まれた刀剣男士である三日月宗近は、史実の通り義輝が暗殺されるように行動しなくてはなりません。
一方、暗殺される運命とは知らない義輝は三日月宗近に不思議な親しみと縁を感じ、誰よりも信頼できる家臣として傍にいてほしいと願います。かつての主である義輝との絆と、刀剣男士としての使命に板挟みとなった三日月宗近は…。
三日月宗近と義輝の最終決戦は、本作のクライマックス!将軍足利義輝が暗殺された「永禄の変」を主題にして、「歌舞伎」と「刀剣乱舞」が融合した話題の舞台を、臨場感あふれる映像と音響のシネマ歌舞伎でお楽しみください。
3月25日(月)、シネマ歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』舞台挨拶付き完成披露上映会が行われ、本作に登場する刀剣男士を演じた尾上松也、尾上右近、中村鷹之資、中村莟玉、上村吉太朗、河合雪之丞の6名が登壇。大きな歓声に包まれました!
当日の様子はこちら
5月以降も、多彩なラインナップをご用意しております。詳しいラインナップは次ページへ!
新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』耳より情報
「新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』京都南座 衣裳展」
■開催期間
2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)
※4月15日(月)、16日(火)、17日(水)、22日(月)、23日(火)、24日(水)は休業
※天候・災害等の諸事情により、開演時間・公演内容の変更、延期、または中止させていただく場合がございます
■時間
木曜日、金曜日 12:00~18:00 最終入場17:30
土曜日、日曜日、祝日 11:00~18:00 最終入場17:30
※4月30日(火)、5月1日(水)、2日(木)は祝日扱いとなります
■場所 南座
■チケット 前売:2,500円 当日:2,700円(税込)
※入場者特典として、「ミニ色紙」を全7種よりランダムで1枚、入場時に全員お渡しします。絵柄は選べません
衣裳展では、実際に舞台で使用された衣裳、鬘、刀剣などの小道具もご覧いただけます。チケット購入方法、その他詳細は、公式サイトからご確認ください。「新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』京都南座 衣裳展」公式サイト
「新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』京都南座 衣裳展」オリジナルグッズ
「新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』京都南座 衣裳展」では、オリジナルグッズを販売。通信販売も予定しております。
詳細は決定次第、こちらよりご案内します。
新作歌舞伎『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』新橋演舞場公演ブロマイドも、4月5日(金)より「松竹歌舞伎屋本舗」公式通販サイト限定で販売中です。詳しくはこちら