歌舞伎いろは

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数十年を経てなお白い深山和紙。
上/今さんが漉く和紙。用途や注文主によって配合を変える。
下/刈り取った楮は束にして蒸かし、手作業で皮を剥ぐ。左はきれいに皮をはぎとられたあと。
左/深山和紙の昔ながらの製法を守り続ける今さんご夫婦。

歴史を継ぐ紙・深山和紙

 深山和紙の歴史は古く、はっきりとはしない。だが少なくとも江戸時代には、良質の和紙として江戸へと大量に送る、米沢藩の重要な輸出品だったとか。「薄くて、滑らかで、丈夫」な紙を漉けるのが、腕の良い証拠。漉いた紙の重さが1帖何匁かによって、軽いほうから順に「松・竹・梅」と職人のランクが決められていたという。明治維新で藩の買い上げ制度が打ち切りになり、それまでのように作れば必ず売れる商品ではなくなったことから、紙漉きをやめる農家が続出。深山地区だけに、比較的まとまって紙漉きを続ける家が残ったことで、この地方で作られる和紙は「深山和紙」と呼ばれて残ることになったようだ。

 現在、本当に昔ながらの製法で深山和紙を作り続けているのは、今利一郎さんの家だけになった。仕上がりを白くするために、楮を煮る際に化成ソーダを用いるのが現代のポピュラーなやり方だが、それをすると手軽にできる分「1000年もたなくなる」という今さん。平安時代に書かれた源氏物語絵巻など、和紙は1000年もつといわれているが、それはこうした薬品を用いていない紙だからだそうだ。当時と同じ製法を守り続けている今さんが漉く紙は、次の1000年のために、古文書や美術品の修復にも使われている。

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