「こども歌舞伎スクール寺子屋」ってどんな場所? 「こども歌舞伎スクール寺子屋」ってどんな場所?

 平成26(2014)年4月に開校した「こども歌舞伎スクール寺子屋」は、2023年4月に創立10年目を迎えます。その節目を記念し、歌舞伎美人では、伝統芸能である歌舞伎を通じてこどもたちに「和」の心を伝承する「こども歌舞伎スクール寺子屋」をご紹介します。

「寺子屋」の「心」

~歌舞伎座で「和」を学ぶ~

 「こども歌舞伎スクール寺子屋」の目的は、歌舞伎や日本舞踊、そして日本の礼儀作法を通して「和」を学び、豊かな感性を磨くこと。学ぶ機会が限られる、歌舞伎子役の発声や所作、日本舞踊の基礎を学び、美しい身体の使い方、立ち居振る舞いを身につけ、お稽古や発表会、ワークショップなどを通じて日本文化を楽しみ、「和」の心に触れていきます。また、年度末には歌舞伎座ギャラリーで「修了発表会・成果発表会」が行われ、発表会に向けてお稽古に励むことで、物事に取り組む集中力を高め、継続の力を養い、達成感にもつながります。グローバル化が進む昨今だからこそ、歌舞伎をはじめとする日本文化の美しさに触れ、学び、自分の力を磨いて欲しい。その思いが、「寺子屋」に流れる「心」です。


お稽古の1日

 「寺子屋」には、ステップアップして進める3つのコースがあります。入校1年目の方が所属する「梅(基礎コース)」では、月に3回、年間30回のお稽古が開催されます(8月と3月は休校)。このうち1回は、宗家藤間流の講師陣による「日本舞踊」のお稽古、2回は、子役指導講師による「歌舞伎子役演技」のお稽古です。こちらでは、「梅(基礎コース)」の「日本舞踊」と「歌舞伎子役演技」のお稽古の1日をご紹介します。

日本舞踊

開門・準備

「おはようございます、お願いいたします」とお稽古場に向かって元気いっぱいにご挨拶をし、お稽古が始まる15分前にお稽古場に入ります。それぞれ持参したお稽古着(浴衣)に着替え、お稽古の始まりを待ちます。

お稽古開始・ご挨拶

お稽古の始まりはいつもご挨拶から。正座で並び、扇子をひざの前に置き、手をそろえてお辞儀をして、「おはようございます。お願いいたします。」とご挨拶をします。こうした挨拶一つでも、扇子の扱い方、足の引き方、お辞儀の方法と気を使うポイントがたくさんあり、先生が丁寧に指導していきます。

すり足

すり足は日本舞踊の基礎となり、本格的なお稽古に入る前に心を落ち着かせることができます。「手をきれいに」、「足の裏を常に床につけて」、「まっすぐ前を見て」と講師は一人ひとりの生徒の様子を見ながらアドバイス。生徒たちはその言葉をしっかりと受け止め、一所懸命に自分の身体と向き合いながら、歌舞伎座の広いお稽古場の端から端まで進みます。

日本舞踊

いよいよ日本舞踊の演目練習の始まりです。この日取り組んだのは、12月に控える発表会で披露する「関の小万」。唄にのせて先生が一つひとつの振りを丁寧に教えていきます。笠に見立ててかかげた扇子が、はらはらと降る雪へと変わったり…。和の美しさに触れながら、生徒たちも想像力をかきたて、踊っていきます。

お稽古終了・ご挨拶

お稽古時間はあっという間に過ぎ、最後も一列に並んでご挨拶。「皆さん、一所懸命やって偉かったです」という先生のお褒めの言葉に、生徒たちもうれしそうです。「ありがとうございました。」と、元気に最後のご挨拶をして、お稽古が終わります。稽古着(浴衣)から着替え、お稽古場にもお礼のご挨拶をし、お稽古終了です。

歌舞伎子役演技

開門・準備

お稽古が始まる15分前に開門すると、受付を済ませ、大きな声でご挨拶をしてからお稽古場へ。稽古着(浴衣)に着替える前後には、手伝ってくれる保護者の方へも、きちんとお礼を伝えます。また、足袋を履いたり、帯をおさえたりと、自分でできることは自分で行います。

お稽古開始・ご挨拶

準備を整え、お稽古開始です。全員で正座をし、扇子を置いてご挨拶。姿勢や動き、指先の形まで、先生からきめ細やかにご指導をいただきながら、立ち居振る舞いや礼儀作法をしっかりと身につけていきます。生徒たちも背筋をぴんと伸ばし、先生の言葉に耳を傾け、「はい!」とまっすぐに返事を返します。

演技指導(所作)

この日は、2022年9月に行われた中間発表会に向けて『外郎売』のお稽古が行われました。これまでに習った所作や、『外郎売(ういろううり)』の口上を、皆の前で披露します。まずは、先生のお手本を見て、一人ずつ順番に発表の動きや、立ち座りなどの所作を練習します。

演技指導(口上)

続いて、『外郎売』の口上のおさらいでは、歌舞伎子役演技に大切な腹式呼吸や滑舌、口の開け方を確認しながら、せりふに合わせた体や目線の動きを教わります。生徒たちの目は真剣そのもの。高い集中力が養われている様子がうかがえます。

お稽古終了・ご挨拶

お稽古の締めくくりのご挨拶で、「今からコツコツと練習を積み重ねていくと、出来ることの引き出しが増えていきます。向上していこうという意識をもつことが大切ですよ」と、先生から励ましの言葉が贈られました。生徒たちは実りある時間を過ごし、今日も一つ、成長した姿を見せました。着替えを終え、お稽古場を出るときにも「ありがとうございました。」と大きな声でご挨拶をして、お稽古終了です。

次のページでは、参加者の声とQ&Aをご紹介します

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