刀と歌舞伎 刀と歌舞伎

小鍛冶こかじ

ご意見小狐丸こぎつねまる  

 実在した刀工・三条(條)小鍛冶宗近が、稲荷明神の加護によって、名刀「小狐丸」を打つという伝説を舞踊化した作品。実際に舞台上で打たれる槌音のリズミカルな響きや、稲荷明神の霊狐としての躍動など、みどころの多い舞台です。

刀と言えば、実際に演目中に刀を打ってしまう『小鍛冶』。一昨年前に拝見致しました。稲荷明神が神々しく、また格好良く、ブロマイドを求めてしまいました。歌舞伎の『小鍛冶』は他の『小鍛冶』の演目にはない、民の皆さんとのシーンのやり取りも面白かったです。再度、歌舞伎の『小鍛冶』が公演されるときはまた、観に行きたいです。(ししょうさん・50代)

中学生の頃に学校行事で観に行った歌舞伎で『小鍛冶』を観た。当時は不思議な物語〜とあまり気に留めていたわけではないが、刀剣乱舞が好きになってから小狐丸のエピソードを知り、あれ、知ってるな…と思った。すでに観たことがある歌舞伎と刀が繋がってると、当時は特に思わなかったがうれしくなった。(栗原さん・20代)

『小鍛冶』が歌舞伎で上演されると知り、それが初めての歌舞伎鑑賞になりました。花道の見えない席でしたが、配信とはまったく迫力が違い、オペラグラスも駆使して堪能いたしました。(すばるさん・40代)

助六由縁江戸桜すけろくゆかりのえどざくら

ご意見友切丸ともきりまる  

 夜ごとに賑わう吉原に現れた色男の花川戸助六。その正体は、源氏の宝刀「友切丸」の行方を探す曽我五郎で、相手に刀を抜かせて吟味するために、出会う人間に喧嘩をしかけていきます。助六はじめ、次々に登場する個性豊かな登場人物たちも魅力的な、江戸歌舞伎を代表する粋で華やかな芝居です。助六を演じる俳優によって『助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)』や『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』など演目名が異なり、また助六が探し求める刀の名前が変わることもあります。
 また、実は友切丸は平安時代、源氏の祖である源満仲が作らせた「髭切」と「膝丸」という対の刀のうちの髭切が名を変えたものとも言われています。歌舞伎でもたびたび登場する名刀です。

歌舞伎と刀といえば、まず助六が探し求める「友切丸(髭切)」が頭に出てきます。平成30(2018)年に仁左衛門丈の助六を観ました。最後に意休が鼎を割り、その際使われた刀を見た助六が「それぞまさしく友切丸!」と叫ぶ。そのときの仁左衛門丈の顔の凛々しさが忘れられません。(セッキーさん・20代)

「友切丸」を探すために助六が喧嘩を売っているという、“刀”が物語の根源である作品。最初、意休が刀を鞘から抜きそうで抜かない、というのももどかしく面白い。(筥王さん・20代)

展開が重厚で厳かに始まり、助六が舞台に来ると一気に和み、最後はまた締めるという見事な展開。(スケロックさん・50代)

助六の「股ぁくぐれー」が刀を抜かせようとしてのことという、やや無理な設定がよく考えると可笑しい。刀を抜くほどのこととはどのようなことか現代の我々にはちょっと想像つかない。あれで抜いてくれるのかなあ。(jj7さん・50代)

三人吉三巴白浪さんにんきちさともえのしらなみ

ご意見庚申丸こうしんまる  

「三人吉三廓初買」(東京都立図書館所蔵)

 河竹黙阿弥の代表作『三人吉三巴白浪』。『三人吉三廓初買』という外題で初演された本作は、同じ吉三の名をもつ三人の盗賊と100両の金、そして名刀「庚申丸」を巡って、複雑に絡み合う因果が描かれます。庚申丸は脇差で、他の日本刀より短い刀であることも特徴です。大詰の「本郷火の見櫓の場」で和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三が、降りしきる雪のなか繰り広げる立廻りもみどころの一つです。

シアターコクーンで観た勘九郎&福助&橋之助(当時)の『三人吉三』が忘れられません。「庚申丸」を巡って描かれる人間模様は現代にも通ずるモノがあるように思えます。降り続く雪のなか、ガンガン流れる椎名林檎は凄かった…。(ヒロミさん)

『三人吉三』は「庚申丸」の行方と三人の行方が交差する物語。『三人吉三』の大詰めの櫓のシーンが一番好きです。(kirikoさん・40代)

まず驚いたのが白鞘に収められているということです。無垢な白鞘に収められた因果を導く脇差を、お嬢吉三が美しく振るうその姿に惚れました。(ペンネームなしさん・20代)

「庚申丸」を奪い取ったお嬢吉三、庚申丸を探しながらもグレたお坊吉三、そして庚申丸を盗み出した男の息子である和尚吉三。庚申丸によって結ばれた「三人吉三」の奇妙な縁。でもその絆は見ていて羨ましくなるくらいひたむきなもの。吉祥院の場面で刀に手をかけるお嬢とお坊を思わず止めに入りたくなります。そして捕物の場は何度観ても胸熱。刀は普通、何かを断ち切るものですが、庚申丸は三人の吉三を結びつけた不思議な刀です。(ミナさん・40代)

仮名手本忠臣蔵かなでほんちゅうしんぐら

 言わずと知れた、主君の仇討ちを志す四十七士の物語。物語の発端となる大序から、本懐を遂げる十一段目の討ち入りまで、随所に刀が登場します。常に刀とともにあった武士の世界や、仇討ちをとりまくさまざまな人間ドラマをたっぷりと描いた傑作長編が、いまも人々の心をとらえて離しません。

初めての歌舞伎観劇が、令和5(2023)年南座「三月花形歌舞伎」の『仮名手本忠臣蔵』でした。江戸式、上方式両方拝見しましたが、江戸の尾上右近さんの切腹が、変な言い方ですがとても美しく、上方の中村壱太郎さんは、観客に背を向けてひっそりと切腹し、同じお話でも、演じ方によってこんなにも刀の使い方が異なるのかと驚きました。(じにさん・40代)

刀といえば由良之助の刀です。人の誹りを受けながらも主君への忠義を忘れずに仇討を達成する由良之助は永遠のヒーローです。(おかるさん)

寿曽我対面ことぶきそがのたいめん

ご意見友切丸ともきりまる  

 曽我兄弟による仇討ち事件を題材にした「曽我狂言」のなかでも、集大成とされる『寿曽我対面』。父の仇である工藤左衛門祐経を前に血気にはやる曽我五郎に対し、工藤は、実父の仇を討つよりも、養父の曽我太郎祐信が紛失した源氏の重宝「友切丸」を詮議するのが先決だと教え諭します。そこに鬼王新左衛門が持参したのは…。

「友切丸」を探す兄弟の心情が痛いほどわかる演目で、最後に工藤が(大事な奉行が終わったら再会しようと)切手を渡し、「きってきって恨みを晴らせよ兄弟」のせりふは涙を誘います。(あおさん・30代)

日本人ならば知らぬ人は少ないであろう曽我兄弟のお話であり、あらすじ自体はとっても簡単な観やすい演目。「髭切」こと「友切丸」の刀の登場がまさに物語の転機。“主役は遅れてくる”を体現しているよう。この刀が見つかったことで兄弟の復讐への道が一歩進んでしまう大切な出来事。(りぃのさん・30代)

歌舞伎座「團菊祭五月大歌舞伎」『寿曽我対面』が、歌舞伎オンデマンドで7月6日(木)まで配信中です。ぜひご覧ください。