恋と歌舞伎 恋と歌舞伎


 歌舞伎には恋愛模様を描いた作品が多く存在します。長年連れ添った夫婦の仲睦まじい愛や、駆け落ちする二人の愁いを秘めた恋、時には執念にも変わる激しい恋まで…。その登場の仕方は多種多様です。

 先月、歌舞伎美人では「あなたがえらぶ “恋と歌舞伎”」と題し、皆様から「恋といえば、この演目!」と思う作品を、思い出やエピソードと合わせて募りましたところ、多くのご投稿をお寄せいただきました。今月は、歌舞伎の恋愛模様をテーマごとに分け、反響の大きかった演目についてそのあらすじをご意見とともにご紹介します。

 現代とはまた異なる形で描かれる当時の恋愛模様。気になる作品が見つかりましたら、ぜひ劇場、シネマ歌舞伎、オンデマンド配信などでお楽しみください。

目次

廓が舞台の色模様

恋とサスペンス

命をかけて貫く思い

さまざまな愛

廓が舞台の色模様

 江戸時代には、江戸・吉原、京都・島原、大坂・新町に幕府公認の「くるわ」が存在し、その華やかな様子は、さまざまな歌舞伎演目でも描かれています。いわば「高嶺の花」的存在であった傾城(花魁)との、身分を越えた恋愛をテーマとした作品をご紹介していきます。



鰯賣戀曳網いわしうりこいのひきあみ

~運命の恋を実らせた傾城と鰯賣の、心温まる恋物語~

傾城蛍火猿源氏

▲昨年6月にシネマ歌舞伎としてよみがえった『鰯賣戀曳網』

 日本を代表する文学作家の一人、三島由紀夫が手がけた歌舞伎狂言で、昭和29(1954)年に十七世中村勘三郎の猿源氏、六世中村歌右衛門の蛍火という配役で初演されました。その後、十八世中村勘三郎と坂東玉三郎のコンビによりたびたび上演され、人気狂言となりました。

 五条橋で出会った、都随一の傾城である蛍火を忘れられない猿源氏は、関東の大名・宇都宮弾正として身分を偽り、揚屋に向かいます。蛍火と盃を交わすことがかなった猿源氏はやがて酔いつぶれ寝てしまいますが、寝言で自慢の売り声“伊勢の国に阿漕ヶ浦の猿源氏が鰯かう(こ)えい”と発してしまいます。これを蛍火に聞かれたと知った猿源氏は、自分が鰯賣ではないとどうにかその場を言い逃れますが、今度はこれを聞いた蛍火がなぜか号泣し、自身の身の上を語ります…。

 傾城と鰯賣の、身分の差を超えた恋模様をユーモラスかつハッピーに描いた、歌舞伎のファンタジー作品。相思相愛であった二人の結末は多くの方を笑顔にし、読者からのご意見が一番多く寄せられた演目でした! 

ー皆様からお寄せいただいた声ー

ご意見2020年1月に歌舞伎座で観劇しました。猿源氏と蛍火のひたすら一途な恋にきゅんとしたり、ほこほこしたりで、最後までずっと頬がゆるみっぱなしでした。思えばこれが私にとってはコロナ禍前の最後の演目で、皆が声を出して笑い、盛んに大向うがかかって、鰯賣を打ち出しに劇場をあとにする観客の誰もが、幸せそうに口元をゆるめていた様子など、今も鮮明に思い出されます。またあの風景が戻ってくる日を心待ちにしています。(あおさん・40代)

ご意見初めて見た時は、こんなに可愛らしくて、ハッピーな恋物語が歌舞伎にあるの!?というぐらい感動しました。互いを思う一途な恋心は見ている方もドキドキ、そして周りの人の温かさが一層心を優しくしてくれます。歌舞伎の演目に傾城は沢山登場しますが、蛍火は一番幸せな傾城ではないでしょうか?思わず「お幸せに!」と声をかけたくなりますね。(ミナさん・40代)

ご意見ぽっと上気した薄紅の頬、可憐な花のような、幸せな幸せな幸せな恋。 勘三郎さんと玉三郎さんをシネマ歌舞伎で、勘九郎さんと七之助さんを歌舞伎座で拝見しました。 思い出すたびにふうわりと暖かく幸せな気分になります。大好きな演目です。(とにゃはにゃさん)

ご意見2020年の壽初春大歌舞伎で初めてこの演目を観てから、大好きな演目のひとつです!登場人物一人一人が可愛く、最高にハッピーなお話で、何度でも観たくなります!!!!!(ごりりまるさん・10代)

そのほか「廓が舞台の色模様」にまつわる作品

籠釣瓶花街酔醒かごつるべさとのえいざめ

八ツ橋佐野次郎左衛門/八ツ橋繁山栄之丞

ご意見籠釣瓶といえば次郎左衛門と八ツ橋かもしれませんが、わたしは繁山栄之丞と八ツ橋の恋です。本当に失いたくない間夫じゃなければ、あんな愛想尽かしはできない。つらくて自由のない遊女だからこその一途な愛情、恋を感じます。九重花魁の心情にもとても共感できます。 そして、現代でもある話。歌舞伎を見たことないひとに必ずお勧めする演目です。衣装や道具も美しく、観劇後芝居をネタに恋バナできるのも楽しいです。(あいちゃんさん・40代)

▶『籠釣瓶花街酔醒』八ッ橋の鬘はこちら

廓噺山名屋浦里さとのうわさやまなやうらざと

浦里太夫酒井宗十郎

ご意見華やかな吉原が舞台。堅物の侍と凛々しく美しい花魁がお月様の下で出会います。一見の客は受け入れない決まり。しかし、自分に親切にしてくれた侍に心惹かれた浦里花魁は彼を優しく受け入れます。外見ではなく彼の真心を理解する浦里に感銘を受けました。ラストの花魁道中は思わず涙するほど愛に溢れた作品です。(エポニーヌさん・20代)

ほかにお寄せいただいた作品
助六由縁江戸桜すけろくゆかりのえどざくら廓文章 吉田屋くるわぶんしょうよしだやなど…

恋とサスペンス

 歌舞伎の「時代物」「世話物」以外に、「怪談物」というジャンルを確立した四世鶴屋南北の作品には、江戸の市井の人々の暮らしのなかに怪談や古くからの言い伝えを取り入れ、人物の怨念や畏怖心といった心理を描写したものが多くあります。愛情が転じた憎しみや執念が生む、悲劇を描いた作品をここではご紹介します。



桜姫東文章さくらひめあずまぶんしょう

~禁断の恋から始まる男女の因果を描いた、残酷な美の世界~

清玄白菊丸/桜姫釣鐘権助/桜姫清玄

(国立国会図書館所蔵)

 令和3(2021)年4月、6月歌舞伎座で上演された『桜姫東文章』は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎の36年ぶりの共演が大きな話題を呼びました。

 道ならぬ恋に落ちた修行僧清玄と稚児白菊丸は心中しますが、清玄だけが生き残ってしまいます。17年後、高僧となった清玄は出家しようとしていた吉田家の息女、桜姫の願いを聞き入れますが、そこで桜姫が白菊丸の生まれ変わりであると悟ります。一方、桜姫は1年前に屋敷に忍び込み、桜姫の操を奪った男のことが忘れられずにいましたが、その男と同じ釣鐘の刺青をした権助と思わぬ再会を果たします。出家のことも忘れ桜姫は権助に身を委ねますが、桜姫は不義者として捕えられ、それを庇った清玄は、権助の女犯の罪を着せられて寺を追放されてしまいます。運命の歯車に巻き込まれた三人の結末は…。

 僧清玄と稚児白菊丸の禁断の恋、忘れられない男性と同じ刺青を彫り、思い続けた桜姫、そして過去の恋に執着し、白菊丸の生まれ変わりである桜姫を追う清玄…さまざまな恋が渦巻き迎える残酷な結末と、息をのむほどの美しい情景が広がる鶴屋南北の名作です。

ー皆様からお寄せいただいた声ー

ご意見恋とはドロドロで地の底を歩くものであることを教えてくれました。(るよーまさん・40代)

ご意見仁左衛門さんの権助に恋して歌舞伎沼にハマりました!清玄白菊、桜姫権助、清玄桜姫、それぞれ単純な恋ではないかもしれませんが、作品全体を覆う甘さ切なさ、権助と桜姫の濃厚な恋人らしさ。これぞ恋。(ペンネームなしさん)

▶上映予定
シネマ歌舞伎「桜姫東文章」

「上の巻」 2022年4月8日(金)~28日(木)
「下の巻」 2022年4月29 日(金・祝)~5月19日(木)
東劇ほかで上映予定

そのほか恋とサスペンスにまつわる作品

東海道四谷怪談とうかいどうよつやかいだん

民谷伊右衛門お岩

ご意見初めて見た四谷怪談が2021年9月の四谷怪談でした。髪すきの場面など、恐ろしいという印象が残ることが多いですが、お岩は伊右衛門を信じ、ほんとに愛していたのだという愛情も感じました。恐怖の中に美が現れた瞬間は、今でも心の中にしっかりと残っています。(やさくさん・10代)

▶『東海道四谷怪談』公演予定
南座「坂東玉三郎 特別公演」

公演期間:2022年8月 
今年の夏の南座は、思わずぞくりとしてしまう
『東海道四谷怪談』をお届けします。


番町皿屋敷ばんちょうさらやしき

青山播磨お菊

ご意見平成最後の新春浅草歌舞伎で初めて観た『番町皿屋敷』は、身分違いが招いた、あまりにも悲しい恋の結末に衝撃を受けた作品でした。自分の心を試されたと知ってからの青山播磨と菊の緊迫したやりとりを、ひたすら身を固くして見つめていたことを覚えています。(梅子さん・50代)

▶『番町皿屋敷』公演予定
南座「三月花形歌舞伎」

公演期間:2022年3月2日(水)~13日(日)
ダブルキャストで上演される『番町皿屋敷』に
どうぞご注目ください。

▶歌舞伎オンデマンドで配信中
【おうちで新春浅草歌舞伎】
番町皿屋敷

配信期間:2022年3月23日(水)まで
若手歌舞伎俳優による新歌舞伎の傑作を、
ご自宅でもお楽しみください。

ほかにお寄せいただいた作品
色彩間苅豆いろもようちょっとかりまめ かさね京鹿子娘道成寺きょうがのこむすめどうじょうじなど…

命をかけて貫く思い

 相手への愛ゆえに死を選ぶ恋人たちを描く悲劇は、切なくもどこか美しく、観るものの心を惹きつけます。歌舞伎では「心中物」と呼ばれる系統があるほど、男女の情死を描いた数々の作品があり、本懐を果たすために命を捧げる人物も多く登場します。ここでは、愛を全うし死ぬことを選んだ恋人たちが登場する作品をご紹介します。



妹背山婦女庭訓いもせやまおんなていきん 吉野川よしのがわ

~若き二人の恋が導く悲劇。大化の改新を題材とした義太夫狂言の大作~

久我之助清舟◆雛鳥

(早稲田大学演劇博物館所蔵 「貞高」「ひな鳥」【100-2893】、「久我の助」【006-0890】、「大判事」【100-2891】)

 満開の桜のなか、舞台中央を流れる吉野川。その吉野川によって分けられる、紀の国の背山と大和国の妹山が本作品の舞台です。紀の国と大和国は領地をめぐっての諍いがあり、それぞれの国を支配する大判事清澄と太宰後室定高は不和の仲にあります。しかし、大判事の息子・久我之助と定高の娘・雛鳥は、互いの素性を知らずに一目で恋に落ちてしまい、相思相愛の関係。家の事情により会うことは叶いませんが、吉野川を隔てながらも、心を通わせます。

 そのような折、権勢を振るう蘇我入鹿から大判事と定高に、久我之助の出仕と雛鳥の入内が命ぜられます。しかもそれが聞き入れられないときは二人の首を打つように命じられ…。

 忠義を立てるために切腹を選ぶ久我之助と、久我之助への愛を貫くために命を捨てる雛鳥。登場人物それぞれの思いが苦しいほどに心に迫り、胸を締め付けます。

ー皆様からお寄せいただいた声ー

ご意見初々しいうら若き男女が、両家の不和により引き裂かれる悲劇。桜と両家の間を静かに流れる吉野川が観客に涙を誘う。私は、定高・六代目歌右衛門、大判事・八代目幸四郎、久我之助・延若、雛鳥・七代目芝翫で観た舞台が忘れられない。情もあり、舞台の美しさと悲劇が当時小学6年生だった私の心をとらえて、忘れられない舞台となった。(船徳さん・60代)

ご意見舞台中央に流れる吉野川を挟んで、妹山の雛鳥、背山の久我之助、愛し合っていながら、世情により結ばれない悲恋に胸を打たれます。見どころは、「雛流し」。母、定高が雛道具とともに娘、雛鳥の首を吉野川に流し、大判事が受け取る場面で、涙で舞台面が滲みました。(天丼さん・70代)

ご意見妹山背山という限られた空間での純粋な恋の世界に、高校生の頃圧倒されました。(ボンダさん・40代)


新版歌祭文しんぱんうたざいもん 野崎村のざきむら

~一人の男と対照的な二人の女が織りなす、切ない恋の物語~

お光◆久松◆お染

(早稲田大学演劇博物館所蔵 「油屋娘お染 中村福助」【403-0216】、「百姓久作 尾上菊五郎」【403-0217】、「中幕 野崎村の段」「丁稚久松 坂東家橘」「久作娘おみつ 尾上栄三郎」【403-0218】)

 宝永7(1710)年に実際に大坂で起きた心中事件を劇化した「お染久松物」の一つである、こちらの作品。久松の許嫁お光を加え、若き三人の恋模様を描きます。

 百姓久作の娘お光は許嫁久松との祝言を控え、喜びを抑えきれない様子で婚礼の支度をしています。ほどなくして、久松が奉公する油屋の娘お染がやって来ます。実はお染と久松は恋仲。身分違いの叶わぬ恋に、一度は身を引こうとした久松ですが、お染が死をも覚悟していることを知り、二人は心中を誓い合います。そこへ花嫁姿のお光が現れ…。

 愛する人とともに死ぬことを選ぶお染、久松と、恋い慕う者の幸せを願い新たな道へ進むことを決心したお光。皆様からも多くの声を寄せていただいた演目です。

ー皆様からお寄せいただいた声ー

ご意見健気なお光のひたむきな恋、久松・お染の道ならぬ恋、娘の涙を慰める久作の思い。お染を描く世話物の白眉です。(本馬蛇蟇斎さん・40代)

ご意見お光が嬉しそうにしているところも可愛くて、でもそのあと久松とお染のために身を引くところが切なくて大好きです。(カーテンさん・30代)

ご意見お光が最高だと思います。失恋こそが恋の本質だと思います。最初の嫉妬や燃え上がりもすばらしいですが、負けじと戦うのではなく本当に愛した人のために出家する彼女がすきです。道成寺の花子よりも、実はウワテではないでしょうか。(るいさん)

そのほか命をかけて貫く思いにまつわる作品

曽根崎心中そねざきしんじゅう

平野屋徳兵衛お初

ご意見‘Sonezaki Shinjū’ by Chikamatsu Monzaemon is remarkable for being the first ‘sewamono’ play, and the first to feature a lovers’ double suicide. I like it for many reasons: 1) As a ‘sewamono’, it conveys a sense of the real financial hardships felt by ordinary townspeople. 2) It portrays different aspects of human nature, not only love, but also greed and deceit. 3) The courtesan Ohatsu has a very strong character. It is her loyalty to her lover and her unshakeable resolve that ennobles them both. 4) As a work of literature, the final ‘michiyuki’ is breath-taking. The beauty of the text makes this work transcend the confines of a simple love story, turning it into a masterpiece of human expression.

近松門左衛門の『曽根崎心中』は、恋人の心中を描いた世話物であるという点において、実に優れた作品です。私がこの作品を好きな理由はたくさんあります:①世話物として、普通の町人が感じていた本当の金銭的な苦しみを感じることができる②愛だけでなく、強欲さや欺瞞など人間の本質のさまざまな側面を描いている③お初が強い心をもっていること。彼女の恋人への忠誠心と揺るがない決意が、二人の気高さを生みます。④文学作品として、「道行」は息を飲むほどの作品です。文章の美しさによりこの作品は単純な恋物語という枠を超え、人間そのものを表現する傑作となるのです。(Claudiaさん)

恋飛脚大和往来こいびきゃくやまとおうらい

亀屋忠兵衛◆傾城梅川

ご意見封印切の場。この世では叶わぬ恋。しかし、身請けだけでもと意地を見せる忠兵衛の心情と、はち切れそうな思いで見守る梅川。死を覚悟する二人の恋路に、観る側も惹かれます。(ねこまるさん・40代)

ほかにお寄せいただいた作品
鳥辺山心中とりべやましんじゅうなど…

さまざまな愛

 ひとくちに「愛」や「恋」と言ってもその形はそれぞれ違うもの。ここでは、お寄せいただいたさまざまなご意見をご紹介します!

推しへの恋!

<お江戸えどみやげ

お辻◆阪東栄紫お紺

ご意見歌舞伎の演目も詳しくない2021年9月、『お江戸みやげ』を観劇。お辻さんが初めて経験した、栄紫に惚れ込み、駆け落ちのお金を出してしまう、見返りを求めない推しに対する愛。おゆうさんに止められても自分の気持ちを止められない姿がかわいすぎて、お辻さんとおゆうさんに夢中になり、気づけば所作と声と美しさ、目で追ってしまう七之助さんという推しが私にもできた、そんなきっかけになった演目です。(はるさん・40代)

ご意見贔屓役者さんは贔屓にとって永遠の片思い相手です。でも、こんなに綺麗な片思いを見たことがありません。お辻さんの恋は実らないけど、初恋のトキメキを思い出させてくれます。栄紫もお辻さんの純粋な気持ちがわかるからこそ、片袖を渡したのでしょう。そんな栄紫は顔も心もイケメン!一緒になれなくても成就する恋、憧れます。けど、全財産は渡せないだろうな(笑)(ミナさん・40代)

ご意見恋人同士の栄紫とお紺は勿論、お辻さんが栄紫に寄せる純粋な乙女の恋心がとても可愛らしく、大好きな演目です。(ゆさん・20代)

動物と人間の愛

義経千本桜よしつねせんぼんざくら

狐忠信静御前

ご意見My favorite story of love is actually the fox Tadanobu pursuing the drum made from his parents’ hide, held by Shizuka Gozen. To me it’s more powerful than a romance and makes me cry every time I think of it! Though I’ve only seen “Yoshitsune Senbon Zakura” online, I hope I can return back to Japan soon and someday watch it in person.

私が一番好きな愛の物語は、静御前が持つ自分の両親の皮で作られた鼓を慕う狐忠信のもの。この愛は、恋人同士の愛よりも力強く私の心を揺さぶり、いつも思い出すだけで涙が出ます。オンラインでしか『義経千本桜』を見たことがありませんが、いつか日本に戻り、直接観られることを願っています。

ご意見(道行初音旅)道行の場面「恋と忠義はいずれが重い」という義太夫の詞章が印象的です。静御前と忠信は主従関係なので恋人同士ではないのですが、美しい満開の桜を背に華やかに歌舞伎役者さんが舞い踊る舞台にはロマンチックな雰囲気があふれ、うっとりとします。(カンブリア大爆発さん・20代)

▶『義経千本桜』「吉野山」公演予定
「南座 歌舞伎鑑賞教室」

公演期間:2022年5月12日(木)~18日(水) 
歌舞伎の三大名作である『義経千本桜』の「吉野山」を、
分かりやすい解説でお伝えします。

▶歌舞伎オンデマンドで配信中
【おうちで新春浅草歌舞伎】
義経千本桜
「川連法眼館の場」

配信期間:2022年3月23日(水)まで
「四の切」の通称で親しまれる、親子の恩愛を描いた心温まる人気作


 「恋と歌舞伎」、いかがでしたでしょうか。皆様から非常に多くのご投稿をいただきましたが、残念ながら掲載しきれなかった作品を、こちらにご紹介します。

『仇ゆめ』、『磯異人館』、『芋掘長者』、スーパー歌舞伎「オグリ」、『お祭佐七』、『心謎解色糸』、『新・三国志Ⅱ孔明篇』、『末摘花』、『染模様恩愛御書』、『ぢいさんばあさん』、『泥棒と若殿』、『直侍』、『本朝廿四孝』、『身替座禅』、『八百屋お七』、『与話情浮名横櫛』、『連獅子』ほか

 この他にも、恋が登場する演目はまだまだたくさんあります。また、今回ご紹介したテーマはあくまで一つの切り口であり、一概に分けられるものではなく、同じ演目でもその捉え方は、観る人によって変わるもの。作品ごとに魅力があり、登場人物ごとに思いがあります。ぜひこれからも、歌舞伎で描かれる色とりどりの愛の形をお楽しみください。

 歌舞伎への愛と舞台を観る瞬間の感動にあふれた、素晴らしいメッセージをお寄せくださいました皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。