刀と歌舞伎 刀と歌舞伎

土蜘つちぐも

ご意見膝丸ひざまる  

「土蜘」(東京都立図書館所蔵)

 能の「土蜘蛛」をもとにつくられた長唄の舞踊劇です。病に伏せる源頼光のもとに、比叡山の僧・智籌が現れて祈祷をしようとしますが、その正体が土蜘の精であると見破った頼光は、「膝丸」で僧に切りかかります。土蜘の精が千筋の糸を繰り出す華麗な立廻りも眼目の一つです。この出来事から「膝丸」は「蜘蛛切」と呼ばれるようになったというエピソードもあります。

「膝丸」は何度も名前が変わりますが、そのなかの一つの由来を歌舞伎で観られます。(ペンネームなしさん)

「蜘蛛切」がメインの演目。10代のときに観ましたが、わりとわかりやすく、だからこそ、あ、これはきっと江戸時代にはかっこよくて斬新な舞台だったんだな、ジャンプのマンガの実写化みたいだなと思いました。マンガの実写化みたいと捉えたことで、30年経った今も歌舞伎をあまり難しく考えずに楽しんで観ることになっているので、若いときに観る演目大事!と思います。(まりんさん・40代)

しばらく

ご意見雷丸いかずちまる  

 天下を狙う清原武衡が、反抗する加茂次郎らの首をはねようとしたところに、「暫く」と声がかかり、立派な大太刀を佩いた鎌倉権五郎景政が登場。加茂次郎らの命を助け、武衡が神社に奉納しようとしていた「雷丸」が偽物であることを暴きます。元禄期から長く愛されてきた歌舞伎の祝祭劇です。

「暫 市川團十郎」(東京都立図書館所蔵)

歌舞伎で刀といえば、まず思い浮かぶのが歌舞伎十八番『暫』の主人公、鎌倉権五郎が手にする大太刀。戦国時代にはあれぐらいの大太刀があったという話を聞いたことがありますが、実際よりさらにデフォルメされたあの大太刀は、拵えとともに観客の度肝を抜く、歌舞伎ならではの大胆な発想の賜物だと思います。芝居のラスト、大太刀をひと振りするだけで悪人を成敗する瞬間は、観終わったあと、いつも爽快な気分になります。(こうやさん・30代)

女暫おんなしばらく

ご意見倶利伽羅丸くりからまる  

 荒事の『暫』を、女方が演じる趣向が特徴の本作。女武者として名高い巴御前が、鎌倉権五郎と同じ柿色の素襖に大太刀といういで立ちで現れます。刀をめぐるやりとりで用いられるのは、「雷丸」ではなく「倶利伽羅丸」。豪快なツラネや見得、花道の六方を披露しながらも女らしさを見せる姿に洒落っ気があふれます。

「女暫」(東京都立図書館所蔵)

とにかく玉三郎さんと吉右衛門さんの花道でのやり取りまで、これぞ歌舞伎と思わせてくれる展開が粋でした。刀でそれって最高ですよね。(usagiさん・60代)

そのほかコメントをお寄せいただいた、刀が登場する演目

『ぢいさんばあさん』
質流れの刀に魅入られて、その後の人生が一変してしまう夫婦の悲しさと、ぢいさんばあさんになって再会する二人の愛らしさがとても好きな作品です。役者によって、刀の鞘走りで思わず斬ってしまう妖刀っぽさが出るときと、怒りを抑えられず自ら刀を抜く「短気は損気」を体現してしまう人間性が出るときと、演出が分かれるのも楽しいです。(ペンネームなしさん・30代)
▶あらすじ

祗園祭礼信仰記ぎおんさいれいしんこうき 金閣寺きんかくじ
金閣寺=爪先鼠。私のこのイメージを変えたのが中村児太郎さんです。雪姫が家宝「俱利伽羅丸」を懐に抱いて花道を駆け抜ける場面。雪姫のひたむきさ、直信への一途な愛が伝わってきて、なんと美しかったことか…。児太郎さんの表現力に心が震えました。その日以来、満開の桜の木の下で児太郎さんの雪姫を思い出し、10mほど走ってみる私がいます。(なりこまりこさん・30代)
▶あらすじ

一條大蔵譚いちじょうおおくらものがたり
歌舞伎を観つつな生活のなかで刀剣乱舞を好きになり。それ以降は刀が出てくるとついつい、あれはなんの刀だろうと注目して観るようになってしまいました。それを一番最初に思ったのが『一條大蔵譚』に「友切丸」が出てきたときです。好きなものと好きなものがリンクして、さらに歌舞伎を観るのが楽しくなった瞬間でした。『刀剣乱舞』の歌舞伎も楽しみにしています。(たのこさん・40代)
▶あらすじ

紅葉狩もみじがり
平維茂が気を失っている間、刀が鬼女に鋒を向けて怯ませる様子が、コミカルで非常にお気に入りです。美女が鬼に化ける直前、キッと維茂を睨みつけるのも毎回楽しみにしてしまうポイント。王道ですが毎回どのようになるのか楽しみな演目です。(なっちさん・30代)
▶あらすじ

太刀盗人たちぬすびと
歌舞伎初心者の自分が、初めて自分から観に行った作品です。お話の内容も面白くわかりやすく、笑いどころもたくさんあり大好きな作品です。(3号さん・20代)
▶あらすじ

日本振袖始にほんふりそではじめ
『日本振袖始』は過去に2回ほど劇場で拝見しましたが、ダイナミックな刀を使った立廻りが印象的でした。(歌舞伎しか勝たんさん・10代)
▶あらすじ

阿弖流為あてるい
『阿弖流為』の勘九郎さんの刀裁きが素晴らしい!!確か通常の使い方と違っていたのでは…幸四郎さんとの殺陣もお見事でした。それまでは1回、せいぜい2回しか拝見していなかったのに、『阿弖流為』から何回も何回も観劇する癖がついてしまったような…。(ミシさん・60代)
▶あらすじ

2024年2月9日(金)~15日(木)、シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為<アテルイ>』が東劇ほか全国34館で上映されます。詳細はこちらでご確認ください。

 まさに切っても切れない関係の刀と歌舞伎。今回も、とてもたくさんの熱い投稿が集まりました。残念ながら掲載しきれなかった作品を、こちらにご紹介します。

『九州苅萱関』、『国定忠治』、スーパー歌舞伎『オグリ』、スーパー歌舞伎『八犬伝』、『義賢最期』、『蘭平物狂』ほか

 素晴らしいメッセージをお寄せくださいました皆様に、改めて厚く御礼申し上げます。今後も、歌舞伎に登場するさまざまな刀にご注目ください!

本ページに掲載の浮世絵は、注記のあるものを除きすべて国立国会図書館蔵です。

この夏、あの“刀剣乱舞”が歌舞伎の世界に出陣!
2023年7月2日(日)~27日(木)

新橋演舞場 新作歌舞伎
『刀剣乱舞 月刀剣縁桐』

公演詳細はこちら

生配信の詳細はこちら