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「四国こんぴら歌舞伎大芝居」初日の賑わい

「四国こんぴら歌舞伎大芝居」初日の賑わい

 

 

 4月9日(土)、香川県琴平町 旧金毘羅大芝居(金丸座)「第三十二回 四国こんぴら歌舞伎大芝居」が初日の幕を開けました。

 晴れやかな青空のもと、四代目中村鴈治郎襲名披露公演初日を迎え、こんぴら歌舞伎には関西の歌舞伎の活気が満ちあふれました。幕開きは『毛谷村』。3度目となる六助を、愛之助が勤めました。山間の毛谷村の風情が金丸座にぴったり合い、お客様をすぐに芝居の世界へと誘います。

 

 新調された祝幕が開き、藤十郎が四代目鴈治郎襲名をご披露して始まった「口上」。「成駒家と澤瀉屋は初代以来の深いご縁」と切り出した中車、「子どもの頃より可愛がっていただいた」と感謝した愛之助。「8歳の兄と6歳の私の初舞台を喜んでいたのが、祖父の二代目鴈治郎でした。それから半世紀、兄の襲名披露に感無量でございます」と喜びを隠せない扇雀、亀鶴は代々の鴈治郎とのつながりを語り、「本当にやさしいお兄様」と、四代目に賛辞を贈りました。壱太郎は一昨年に続いての出演となる今回の公演で、「父の襲名がかないましたことを、喜びおるしだいにございます」と述べ、いよいよ鴈治郎が顔を上げました。

 

 「初代以来の鴈治郎の名を辱めませぬよう、生涯、芸道に精進いたす心」と、誓いも新たに、金丸座のお客様に四代目襲名を披露した鴈治郎。最後に藤十郎が、お客様への感謝とともに「歌舞伎がいついつまでも栄えまするよう、請い願い奉りまする」と締めの言葉を高らかに響かせると、満場のお客様からの祝福の拍手は、小屋を揺らさんばかりに鳴り渡りました。

 

 第一部の切は、鴈治郎が襲名披露でどうしてもやりたかったという『幸助餅』。相撲に入れ揚げて没落した米問屋の主人、幸助を鴈治郎、幸助が贔屓にする力士、雷に中車で、場面ごとに変化する二人の関係にお客様も一喜一憂。後味のよい上方人情話で、昼の打ち出しとなりました。

 まだまだ日差しの残る時間から始まった第二部『あんまと泥棒』、1年ぶりに按摩秀の市を勤める中車の相手は、上方の出という設定になった愛之助の泥棒権太郎です。初役の愛之助を相手に、前回とは違った味わいの二人芝居となりました。舞台は秀の市の家の小さなひと間、芝居小屋の密な空間がしっくりとよく合います。

 

 夕暮れの陽光となったところで幕を開けた扇雀の『鷺娘』は、地元のボランティアの協力もあって、金丸座の機構をフルに使った、こんぴら歌舞伎ならではの舞台となりました。鷺娘に降り積む雪はぶどう棚から客席へも落ちてきます。明かりとりの窓を閉めて暗くなった場内に、激しく羽を羽ばたかせる白い鷺の精が浮かび上がり、ドラマチックな幕切れとなりました。

 

 最後は玩辞楼十二曲の内『封印切』。忠兵衛はもちろん鴈治郎、花道の出で手拭いを頭に乗せたところで「がんじろはん!」の声もかかり、梶原源太も舌を巻く色男ぶりで魅了しました。襲名披露公演を締めくくるにふさわしい一幕で、上方歌舞伎の、そして近松作品の濃厚な味わいが場内に広がります。余韻に浸るお客様の胸にも、そして、金丸座にも、鴈治郎の名をしっかり刻み付けた初日となりました。

 旧金毘羅大芝居(金丸座)「四国こんぴら歌舞伎大芝居」は、4月24日(日)までの公演。チケットは、チケットWeb松竹チケットWeb松竹スマートフォンサイトチケットホン松竹にて販売中です。

 
2016/04/09