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御園座「第五十回記念 吉例顔見世」初日の賑わい

 10月2日(水)、御園座で「第五十回記念 吉例顔見世」の幕が開きました。

 今年でいよいよ50回を迎えた名古屋の「吉例顔見世」は、今昔物語を題材にした『狐と笛吹き』で幕を開けました。梅玉が春方を、雀右衛門がともねを、錦之助が春方の友人秀人を演じます。春方とともねが四季を通して深い情愛を結んでいく様子、そして最後に訪れた切ない結末が、観る者の心に余韻を残しました。

 

 続いての演目は、『双蝶々曲輪日記』。今回は、よく上演される「角力場」と「引窓」に加え、この二つの場面のつながりがわかる「難波裏」を加えての上演です。大坂らしい風情があふれる「角力場」では、鴈治郎の放駒と獅童の濡髪が、一歩も引かぬ達引を見せます。「難波裏」では濡髪が人を殺める顛末が明らかとなり、物語は「引窓」へ。仁左衛門の南方十次兵衛と、孝太郎の女房お早らのもとへ現れた濡髪。家族が互いを思う心が描かれた、十次兵衛たちの厚い人情が胸を打つひと幕です。

 夜の部は、江戸時代に実際にあった事件をもとに描かれた『碁太平記白石噺』から始まります。場面は梅玉が勤める大黒屋惣六の営む揚屋。雀右衛門が勤める宮城野と、孝太郎が勤める妹の信夫の再会を描きます。殺された父の仇討ちを誓う姉妹に、侠気ある計らいを見せる惣六の姿が印象的です。

 

 中幕は仁左衛門の山蔭右京、鴈治郎の奥方玉の井による『身替座禅』。恐妻家の右京は、錦之助演じる太郎冠者に自分の身替りをさせ、恋人との逢瀬に向かいます。戻った右京が浮気の一部始終を語り、鬼の形相となった玉の井に追われる場面では、客席中が笑いに包まれました。

 

 切は長谷川伸の代表作の一つ、『瞼の母』です。母おはまを秀太郎が、生き別れの息子、忠太郎を獅童が勤めます。久しぶりの再会を果たしたおはまと忠太郎の、胸に迫るやりとりがぐっと観客の心をつかむなか、幕となりました。

 御園座「第五十回記念 吉例顔見世」は26日(土)までの公演。チケットは、御園座チケットWeb松竹ほかで販売中です。

 

2019/10/07