歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっと知りたい! 菊五郎さんのこと


 「尾上菊五郎劇団」を率いる菊五郎さん。若き日は美貌の女方として人気を集め、その後はだんだんに立役に力点を移してきました。『弁天小僧』の菊之助、『三人吉三』のお嬢吉三、『切られ与三郎』の与三郎、『天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)』の片岡直次郎、『忠臣蔵 五、六段目』の勘平など、当り役は数えきれません。

七代目 尾上菊五郎
          (おのえ きくごろう)

生まれ
昭和17年(1942年)10月2日、東京生まれ。

家族
父は七世尾上梅幸、息子は五代目尾上菊之助。

初舞台
昭和23年4月新橋演舞場『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』禿(かむろ)で五代目尾上丑之助を名のる。

襲名
昭和40年5月歌舞伎座『寿曽我対面』曽我十郎ほかで四代目尾上菊之助を襲名。
48年10・11月歌舞伎座『弁天娘女男白浪』弁天小僧菊之助ほかで七代目尾上菊五郎を襲名。

受賞
昭和60年度 芸術選奨文部大臣賞。61年度 日本芸術院賞。平成12年 日本芸術院会員。15年 重要無形文化財保持者(人間国宝)。
菊五郎の色気(文春新書)
長谷部 浩 著
¥1,000
 

 11月の新橋演舞場で演じる宗五郎と新三は世話物。世話物は好きだと菊五郎さんは言います。
 「世話物の芝居は細かいんですよ。どの役でも初めて演じるときには、せりふを言って決まった動きをすることだけに神経がいきます。やることの多い新三なんて特にそうです。でも、回数を重ねるうちに周りが見えてくる。そうすると面白くなってくる。『相手がこういう風にせりふを言っているから、こっちが言いにくいんだな』と気付くこともある。そうすると『こういう風に言ってくれないか』と注文も出せます」

 時代物と世話物では周囲の動きにも違いがあります。
 「時代物ですと主役が芝居をしているときに、ほかの俳優は動いてはいけない。たとえば、『熊谷陣屋』の相模が、熊谷直実が芝居をしているときに動いたら邪魔になるでしょう。四天王も動けません。でも世話物は違います。割合に動いて大丈夫なんです」
 「『髪結新三』の「新三内」では弥太五郎源七と新三がやりあっているときには、勝奴も油断なく身構えています。初鰹を売る鰹売りだって鰹の解体ショー(笑)をやりますし、さばいた後に水をさっとかけたりして見せ場をつくっています。小道具の使い方、せりふなど実にうまくできていますね」


 二枚目立役を本領としつつも、『法界坊』の法界坊も演じ、さらには12月の京都南座の「吉例顔見世歌舞伎」では、得意とする『実盛物語』の斎藤実盛以外に、『切られ与三郎』の蝙蝠安(こうもりやす)に初挑戦します。こちらもどうぞお楽しみに。

ようこそ歌舞伎へ

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