歌舞伎いろは

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胡蝶は今でも踊れます!

 お父様(勘三郎)が『鏡獅子』をなさったとき(平成元年6月新橋演舞場ほか)には、弟の七之助さんと二人で胡蝶を踊っていらっしゃいます。また、芝翫おじい様の襲名披露興行のとき(昭和42年5月歌舞伎座)は、お母様(芝翫さんの二女で勘三郎夫人の好江さん)と伯母様(芝翫さんの長女で日本舞踊家の中村梅彌さん)も胡蝶をお勤めです。
 「胡蝶は母に習いました。教え方は大変に厳しかった。母にとっても特別な踊りなんでしょう。それを僕たちにわからせるために厳しくしたんだろうと思います。でも、弟と胡蝶を踊るのは楽しかった。どうやったらきれいになるかと、二人でよく相談をしました」

 胡蝶も大切なお役だったことがよくわかります。
 「後ジテで父の獅子が毛を振るときに、胡蝶が二人で回りますでしょう。父を見ていて、今日は特に乗っているなと思ったときには、気持ちを合わせて早く回ったりしました。作品をよくするためには、弥生や獅子の精という主役だけではなく、すべてがよくないといけません。ダメなときは父に“蛾が踊ってるんじゃねえぞ”と叱られました。今踊れと言われても胡蝶は踊れますよ」

祖父、芝翫に見せたかった舞台

新橋演舞場 二月大歌舞伎

平成24年2月2日(木)~
26日(日)
公演情報

撮影:篠山紀信/
提供:松竹株式会社



中村勘太郎改め
六代目中村勘九郎襲名披露


夜の部
新歌舞伎十八番の内 『春興鏡獅子』
(しゅんきょうかがみじし)
小姓弥生
後に獅子の精
勘太郎改め
勘九郎
胡蝶の精 玉太郎
宜 生
用人関口十太夫 亀 蔵
家老渋井五左衛門 家 橘

 『鏡獅子』を教わられた芝翫おじい様も、六世菊五郎に指導を受けられた踊りの名手でいらっしゃいました。
 「祖父の教え方はまるで方程式のようでした。その人のレベルに合わせて、どうやったらどう体が動くかを教えてくれる。ですから、初演当時の18歳の僕に合った教え方をして“今はその踊り方でいいよ”と言ってくれました。だから、今度の踊りも、ぜひとも祖父に見てもらいたかった。祖父が亡くなった(平成23年10月10日没)のが本当に残念です」

 初演のときのことで、特に憶えていらっしゃることは。
 「初日が開くと、僕の楽屋が大変でした。先輩の皆さんが僕のことを心配してくださる。舞台を見て神谷町の祖父もいろいろ言いますし、父も言うし、(坂東)玉三郎のおじ様もおっしゃってくださる。“どうしてああいう風にやるんだ”“ダメだよ、お前、何でそうやるんだ”“あなた何でそういう風にやるの”…。それがお一人おひとり微妙に違ったりして。“誰々にそう教えていただいたので”とはとても言えない。皆さんに“すいません”と謝って、千穐楽までずっとそんな具合でした」

 皆さんが『鏡獅子』の初演を気にしてくださっていた。
 「本当にありがたいことだと思います、気にかけてくださる方がたくさんいらっしゃるのは。今回はもちろん、神谷町の祖父から教わったことをしっかりといたします」

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