歌舞伎いろは

【歌舞伎いろは】は歌舞伎の世界、「和」の世界を楽しむ「歌舞伎美人」の連載、読み物コンテンツのページです。「俳優、著名人の言葉」「歌舞伎衣裳、かつらの美」「劇場、小道具、大道具の世界」「問題に挑戦」など、さまざまな分野の読み物が掲載されています。



もっともっと楽しんでいただくために


良助という役に徹底的に取り組む

 今回の上演も、橋之助さんが演じる岡田良助が中心のバージョンで、良助は兵部方だったのが、善人方に寝返るという“返り忠”を見せます。その三幕目「岡田良助住家の場」が、良助の最大の見せ場ですね。
 「『良助住家』は、前半は自分のために地球が回るぐらいに思っている良助が、兵部の自分の家族に対するむごい仕打ちを知ってガラッと変わり、善人方に寝返ります。良助は悪人ですが、そればかりではない。家族を幸せにし、立身もしたい。そのためなら道を選ばなかった。男臭いドラマです。良助がちゃんとしていれば一家は幸せになれた。だから切ない…」

 もうすっかり、良助という人物を手に入れられているようですが。
 「初演では良助という役に精一杯ぶつかっていきました。演じていて毎日涙がぼろぼろ出た。僕の子どもも小さかったので、親子の別れを自分のことのように感じてしまうところがありました。感情が先に立っていたんです。ところが、前回の南座(平成21年5月)で、気付かされたことがいろいろありました」

何度も手がける役だからこそ

平成中村座 四月大歌舞伎

平成24年3月3日(土)~
27日(火)
公演情報

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平成21年5月京都四條南座
(撮影:松竹株式会社)

第2部
通し狂言 小笠原騒動』
(おがさわらそうどう)

序幕 明神ヶ嶽芒原の場より
大詰 小笠原城内奥庭の場まで
岡田良助/林帯刀 中村 橋之助
犬神兵部/飛脚小平次 中村 勘九郎
お大の方/小平次女房お早 中村 七之助
隼人妹小萩 坂東 新 悟
林数馬 中村 国 生
良助母お浦 中村 歌女之丞
米屋市兵衛 笹野 高 史
大石百介 片岡 亀 蔵
小笠原豊前守 坂東 彌十郎
小笠原隼人/奴菊平/良助女房おかの 中村 扇 雀
小笠原遠江守 中村 勘三郎

 では、今はどんな岡田良助にしたいとお思いですか。
 「“感情の赴くままに行ったほうがいいのでしょうか”と、演出の奈河彰輔さんにうかがったら、“若いうちは好きなようにおやりなさい”と言われました。ですから、やる度に発見していきたい。今度は等身大の人間として演じ、人間臭さを出したい。父(芝翫)も、“芝居は匂いが大事だよ”と言っていました。その人がそこで生活していると思えることが大切です」

 今回は6度目の良助。何度も再演されるにあたって心がけられているのはどんなことでしょう。
 「“慣れない”ことです。子役のころに、『重の井子別れ』の三吉を勤めていて(昭和48年3月国立劇場)、重の井の(六世中村)歌右衛門のおじさんから20日目ぐらいに、“慣れ”を怒られたことがあります。『勧進帳』の弁慶を勤めたとき(平成6年3月南座)には、ご指導くださった松本幸四郎のおにいさんからお手紙をいただきました。“役者はうまくなるものではない。ただ慣れただけだ。毎日新しい気持でやらなければいけない”という内容でした。お手紙は楽屋の鏡台の引き出しの中に入れ、自分への戒めとしています」

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