歌舞伎いろは

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もっと知りたい!時蔵さんのこと


教えること、教えられたこと

中村時蔵さんをもっと知りたい!
中村時蔵
五代目 中村時蔵
(なかむら ときぞう)

生まれ
昭和30年4月26日生まれ。

家族
父は四代目中村時蔵。息子は四代目中村梅枝、初代中村萬太郎。弟は二代目中村錦之助。中村歌六、中村又五郎、中村獅童が従兄弟に当たる。

初舞台
昭和35年4月歌舞伎座『八重桐廓噺』童、『妹背山婦女庭訓』「三笠山御殿」小婢女おひなで三代目中村梅枝を名のり初舞台。

襲名
昭和56年6月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』杉酒屋お三輪、『網模様燈篭菊桐』千葉家奥女中滝川ほかで、五代目中村時蔵を襲名。

受賞
平成20年日本藝術院賞ほか受賞多数。

 時蔵さんは国立劇場養成課の歌舞伎俳優研修生を指導していらっしゃいます。また、お子さんの梅枝さん、萬太郎さんとも俳優の道を歩んでおられます。そうした後輩の方々に教える際に心がけていらっしゃることは何ですか。
 「教えるのは難しい。自分ができないと教えられません。僕はちゃんと教えたいので下調べもしますし、台本やビデオを見て思い出し、復習をします。ですから、自分でもいい勉強になりますね。ただ、息子たちにも"教えてください"、と頼まれてから教えます。本人たちに向上心がなかったら駄目ですから」

 ご自身はどなたに多く教わられましたか。
 「成駒屋のおじさん(中村歌右衛門)と(尾上)梅幸のおじさんです。成駒屋のおじさんには『十種香』の八重垣姫、『鎌倉三代記』の時姫、『妹背山婦女庭訓 三笠山御殿』のお三輪、『毛谷村』のお園、『菅原伝授手習鑑 賀の祝』の八重、『紅葉狩』の更科姫などを教わりました」

 女方の大役といわれるものが多かったのですね。梅幸さんはいかがですか。
 「梅幸のおじさんには菊五郎おにいさんの相手役をするようになってから、世話物も教えていただきました。『重の井子別れ』、『傾城反魂香』のおとく、『寺子屋』の千代、『義経千本桜 四の切』の静御前、『源氏店』のお富、『野崎村』のお光、『妹背山婦女庭訓 吉野川』の久我之助、『髪結新三』の忠七、『一條大蔵譚』の常盤御前もそうです」

古風といわれた祖父の芸

 教えられたことで印象に残っているのは、どんなことなのでしょう。
 「お二人の教えで共通するのは“役になり切るのが大切”ということです。歌舞伎は、決まりは絶対に崩してはなりませんが、それ以外は結構自由に表現してもいいんです」

 だからこそ、俳優さんの個性やお家の特徴が表れてくるのですね。
 「祖父の三世時蔵について言えば、皆さんのお話をうかがっても、写真を見ても、とにかく古風だったようです。昔の役者は皆さん古風でしたよね。それに比べると、現代の俳優はさらさらとしている。私も成駒屋のおじさんに、“もっと時代にせりふを言いなさい”と怒られましたが、それがどんなことか当時はよくわからなかった。義太夫さんにせりふを習ったり、勉強をしないと、なかなか時代にはせりふが言えないものなのです」

ようこそ歌舞伎へ

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